【残念なお知らせ】諸般の事情により、クォーター大阪暮らしは2009年11月末をもって終了することとなりました。これまでのご愛顧に心より感謝申し上げます。今後はこちらのブログで記事を提供してまいります。よろしくお願いします。
2009年07月11日
このブログがDVDになりました。
去る6月に、大阪・福岡・広島・東京・名古屋と、全国5都市で開催し、いずれの会場でも非常に高い評価をいただいた、
「経営戦略考」特別セミナー
『新聞記事で鍛える【超】ビジネス発想力強化セミナー』
がDVDになりました!
※詳細はこちらから(サンプル&直筆アンケートあり)
→ http://www.bbook.jp/seminardvd/20090708.html
「もっと豊かなアイデア、発想力があればなあ・・・」
あなたがもし、そんな風に考えたことがあるなら、ぜひ見ていただきたいです。自信をもっておススメできます。
実際に参加された皆様からは、
「考え方、活用方法がすごい!」
「多くのセミナーに参加していますが、今まででトップ3に入る」
「限られた時間の中、しっかりポイントがつかめました」
とお褒めの言葉を多数頂戴したセミナーです。
当ブログの運営者 森英樹が、実際に当日の新聞を使いながら、自身が蓄積してきたノウハウをたっぷり披露しました。
≪講師からのメッセージ(抜粋)≫
新聞に掲載されるさまざまな企業の取り組みは、まさに「生きた事例」です。
情報として読むだけでなく、それらをベンチマークすることで、コンサルティングに役立てることができるのではないでしょうか。
全くオリジナルな発想を生み出せるのは、ごく一部の天才と呼ばれる人たちだけでしょう。ですが、新聞記事の「生きた事例」をベンチマークすれば、凡人でも、それをきっかけとして、どんどんと発想を生み出していくことができるのです。
その時以来、新聞の読み方が大きく変わりました。それを習慣化するために、メールマガジン
「経営戦略考-日経記事から毎日学ぶ経営戦略の原理原則」を創刊し、非常に多くの支持をいただくようにもなりました。
そして何よりも、新聞記事を読み解く訓練を積むことで、新たなビジネス発想を生むコツがわかってくるようになりました。おかげでクライアントへの提案の質も量も、飛躍的に充実しました。
さらに興味深いことに、ビジネス書で学んだ知識を、新たな発想を生むために活用できるようにもなりました。
新聞記事の読み方を変えたことで、ビジネス書の読み方も変えることができたのです。
※続きはこちらから(サンプル動画&直筆アンケートもあり)
→ http://www.bbook.jp/seminardvd/20090708.html
・・・・・・
「新聞という身近な材料を使って、いかに発想するか?」
あなたも、これを見れば、新聞記事というごく身近な情報にこれ程の価値があったことに驚くと思います。
今回も、「ビジネス選書セミナーDVD」と同様、期間限定の特別感謝価格【5,250円】でご提供します。
発想やアイデアが浮かばないという悩みはもう、おさらばです!
※詳細はこちら(サンプル動画&直筆アンケートもあり)
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「もっと豊かなアイデア、発想力があればなあ・・・」
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実際に参加された皆様からは、
「考え方、活用方法がすごい!」
「多くのセミナーに参加していますが、今まででトップ3に入る」
「限られた時間の中、しっかりポイントがつかめました」
とお褒めの言葉を多数頂戴したセミナーです。
当ブログの運営者 森英樹が、実際に当日の新聞を使いながら、自身が蓄積してきたノウハウをたっぷり披露しました。
≪講師からのメッセージ(抜粋)≫
新聞に掲載されるさまざまな企業の取り組みは、まさに「生きた事例」です。
情報として読むだけでなく、それらをベンチマークすることで、コンサルティングに役立てることができるのではないでしょうか。
全くオリジナルな発想を生み出せるのは、ごく一部の天才と呼ばれる人たちだけでしょう。ですが、新聞記事の「生きた事例」をベンチマークすれば、凡人でも、それをきっかけとして、どんどんと発想を生み出していくことができるのです。
その時以来、新聞の読み方が大きく変わりました。それを習慣化するために、メールマガジン
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さらに興味深いことに、ビジネス書で学んだ知識を、新たな発想を生むために活用できるようにもなりました。
新聞記事の読み方を変えたことで、ビジネス書の読み方も変えることができたのです。
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2009年07月06日
ゲームソフトにスキップ機能
「会社を辞めずに起業する」というコンセプトの「週末起業」は、起業に対する心理的・物理的ハードルを著しく下げました。起業へ向けて行動を起こす人を増やしたという点では、大きな効果があったと思います。
本気で独立起業を考えている人たち向けの起業支援ビジネスの市場が一定規模で存在するとして、「週末起業」の登場は、その下位の市場を創造したとも言えるでしょう。
要するに、起業への“参入”ハードルを下げることで、新たな市場が生まれたわけです。起業に限らず、一般的に、ハードルを下げることが、新市場の創出につながります。
7月6日付けの日本経済新聞に、「任天堂はゲームソフトに初心者向けの『スキップ機能』を採り入れる」という記事が掲載されています。
ゲームの途中で難局にぶつかり前に進めなくなった際に、その場面だけを飛ばして先へ行ける」のだそうです。
難局を何とかクリアしてこそ、ゲームの面白さがあるように思いますが、記事によれば、「何度も途中であきらめているうちにゲームから遠ざかってしまう消費者がいるのに配慮した」とのことです。
厳密には“参入”というより、“継続”ハードルを下げたことになりますが、「ハードルを下げた」という点では、「週末起業」と類似しています。新市場を創出したとまでは言いにくいかも知れませんが、顧客流出を防いだという点で、効果は同様です。
もっとも、ゲーム愛好者になる前に少しだけ遊んでみて、その難しさに耐えられず、放り出してしまう人もいます。そのような人たちについては、スキップ機能による“歩留り”向上実現で、市場創出効果が生まれると言えるでしょう。
要するに、ハードルを下げることは、“参入”にも“継続”にも効果があるわけです。となると、考えるべきは、何がハードルなのかを見極めることでしょう。
ゲームの場合は、途中で遭遇する“難局”がハードルです。週末起業においては、会社を辞めることによる収入リスクです。同じ7月6日付けの日経産業新聞には、語学学習に関するハードルについて触れた記事があります。
7月6日付け日経産業新聞1面に、「語学は1人で学ぶ」というタイトルの記事が掲載されています。「英語などの語学学習にeラーニングを利用する人が増えている」とし、「他人と一緒では気恥ずかしく、1人で学びたいとの潜在需要は高い」と記されています。
自分自身の英会話学習体験を振り返ると、間違えたら恥ずかしいというメンタルブロックを乗り越えたことが、実力アップのブレイクスルーになったと感じています。
ですので、気恥ずかしいなど、何を甘えたことを言っているのか、と思ってしまいます。ですが、それがハードルなのです。ゲームマニアなら、“難局”であきらめてしまうようでは、ゲームの楽しさを理解していないと思うのかも知れません。
私の好きなスキューバダイビングでも、講習を受けてライセンスを取得するまでは至っても、その後が続かない人が多いようです。インストラクターに手とり足とり指導してもらえないことは、初心者にとって大きなハードルです。業界にとって、大きな損失になっていると思います。
顧客視点が重要だと言われますが、「それが当たり前」と思っていると、ハードルだと指摘されて初めて気づくこともあります。リピーターにならなかった人に、なぜ途中でやめてしまったのか、アンケート調査などをすることは、有益でしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業から顧客が離れてしまったのは、なぜだろうか。継続するには、どのようなハードルをクリアしなければならなかったのだろうか。ハードルの存在を「当たり前」とせず、解消すべき障害ととらえ、対策を打つことを考えてみよう。
<参考:日本経済新聞 2009.07.06【9面】>
本気で独立起業を考えている人たち向けの起業支援ビジネスの市場が一定規模で存在するとして、「週末起業」の登場は、その下位の市場を創造したとも言えるでしょう。
要するに、起業への“参入”ハードルを下げることで、新たな市場が生まれたわけです。起業に限らず、一般的に、ハードルを下げることが、新市場の創出につながります。
7月6日付けの日本経済新聞に、「任天堂はゲームソフトに初心者向けの『スキップ機能』を採り入れる」という記事が掲載されています。
ゲームの途中で難局にぶつかり前に進めなくなった際に、その場面だけを飛ばして先へ行ける」のだそうです。
難局を何とかクリアしてこそ、ゲームの面白さがあるように思いますが、記事によれば、「何度も途中であきらめているうちにゲームから遠ざかってしまう消費者がいるのに配慮した」とのことです。
厳密には“参入”というより、“継続”ハードルを下げたことになりますが、「ハードルを下げた」という点では、「週末起業」と類似しています。新市場を創出したとまでは言いにくいかも知れませんが、顧客流出を防いだという点で、効果は同様です。
もっとも、ゲーム愛好者になる前に少しだけ遊んでみて、その難しさに耐えられず、放り出してしまう人もいます。そのような人たちについては、スキップ機能による“歩留り”向上実現で、市場創出効果が生まれると言えるでしょう。
要するに、ハードルを下げることは、“参入”にも“継続”にも効果があるわけです。となると、考えるべきは、何がハードルなのかを見極めることでしょう。
ゲームの場合は、途中で遭遇する“難局”がハードルです。週末起業においては、会社を辞めることによる収入リスクです。同じ7月6日付けの日経産業新聞には、語学学習に関するハードルについて触れた記事があります。
7月6日付け日経産業新聞1面に、「語学は1人で学ぶ」というタイトルの記事が掲載されています。「英語などの語学学習にeラーニングを利用する人が増えている」とし、「他人と一緒では気恥ずかしく、1人で学びたいとの潜在需要は高い」と記されています。
自分自身の英会話学習体験を振り返ると、間違えたら恥ずかしいというメンタルブロックを乗り越えたことが、実力アップのブレイクスルーになったと感じています。
ですので、気恥ずかしいなど、何を甘えたことを言っているのか、と思ってしまいます。ですが、それがハードルなのです。ゲームマニアなら、“難局”であきらめてしまうようでは、ゲームの楽しさを理解していないと思うのかも知れません。
私の好きなスキューバダイビングでも、講習を受けてライセンスを取得するまでは至っても、その後が続かない人が多いようです。インストラクターに手とり足とり指導してもらえないことは、初心者にとって大きなハードルです。業界にとって、大きな損失になっていると思います。
顧客視点が重要だと言われますが、「それが当たり前」と思っていると、ハードルだと指摘されて初めて気づくこともあります。リピーターにならなかった人に、なぜ途中でやめてしまったのか、アンケート調査などをすることは、有益でしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業から顧客が離れてしまったのは、なぜだろうか。継続するには、どのようなハードルをクリアしなければならなかったのだろうか。ハードルの存在を「当たり前」とせず、解消すべき障害ととらえ、対策を打つことを考えてみよう。
<参考:日本経済新聞 2009.07.06【9面】>
2009年06月29日
ネット対戦型ボウリングが人気
6/10に大阪での開催からスタートした『新聞記事で鍛える【超】ビジネス発想力強化セミナー』は、先週金曜日に5箇所目の名古屋で開催し、無事終えることができました。
セミナーの中で、特に強調させていただいたのは、日経記事に掲載されている各企業の施策は、どのような発想から生まれたのかを、自ら考えてみるということです。
発想のプロセスを解明し、それを自らなぞることができれば、自分自身の仕事にも応用できます。日経記事には、その「発想のプロセス」が記されているケースが多いので、非常に助かります。
6月29日付けの日経MJ(流通新聞)に、「遊技施設運営のラウンドワンが昨年8月から導入したネット対戦形式で行うボウリングの利用が好調だ」という記事が掲載されています。
この「ネット対戦ボウリング」は、「全国のラウンドワンの店舗で同時にプレーしている人」が対戦相手となります。スコアのアベレージで対戦相手が自動的に選ばれるので、レベルが同程度で、楽しめます。
記事によれば、「一人でも気軽に同じレベルの相手と対戦できることで、繰り返し利用する人が多く、リピート率は25日現在で70%に達している」そうです。登録会員数が85万人を超えているというから、大成功と評価してよいでしょう。
このアイデアの元について、記事は「開発のきっかけはラウンドワンの中にあるゲームコーナー」だとしています。「ネット対戦を取り入れていたゲーム機器からヒントを得た」ことで、ボウリングのネット対戦を実現しました。
ネット対戦型ゲームの仕組みをボウリングに取り入れたものだということは、記事の指摘を待たずともわかりやすいですね。ですが、記事にしっかりと書いてあると、安心します。
何か新しい取り組みが始まったことが記事で報道された場合、なぜもっと早くそうしなかったのか、についても考えてみるとよいでしょう。そのことについては、記事の解説がないと、わかりにくいかも知れません。
記事は「ボウリングはグループで楽しむものという既成概念にとらわれず1人プレーの仕組みをつくれば、同じような市場はあるとの仮説を立てた」としています。
ゲームをやるなら、一人でやるよりも、誰かと対戦した方がおもしろい。だからこそ、対戦型に価値があります。ですがボウリングは、そもそもグループで楽しむものだから、ネット対戦する意味がありません。それが既成概念だということです。
では、この既成概念は、どのように打ち破られたのでしょうか。世の中全般に、「お一人様」市場が注目されていることがあります。一人でボウリングを楽しみたい人は、きっと多いはず、と推測できたのかも知れません。
とは言え、顧客データを分析し、実際に一人でボウリングをしている人が多いかどうかは、確かめにくかったかのではないでしょうか。ネット
対戦ボウリングのサービスが生まれるまで、その市場は顕在化しなかったからです。
冒頭で述べたセミナーで、ある参加者の方から、記事を読み取る感性を鍛えるにはどうしたらよいか、という質問がありました。その際、記事の文章の一言一句まで、こだわりながら読むことだ、と回答させていただきました。
今回の記事では、「仮説を立てた」という表現が使われています。既に1人プレーの市場が拡大しているのであれば、「仮設」という表現は使わないでしょう。市場が拡大(顕在化)している場合、ネット対戦は、1人プレーする人たちへの付加サービスに過ぎなくなってしまいます。
ネット対戦ゲームが支持されるなら、ネット対戦ボウリングも支持されるはず。そのような仮説が、見事的中したのです。ネット対戦ゲームが存在したからこそ、ネット対戦ボウリングというアイデアも浮かび、成功する確率は高いと読んだわけですね。
では、もし、ネット対戦ゲームが普及しないまま、いきなりネット対戦ボウリングが登場したらどうでしょうか。利用者は戸惑ったのではないでしょうか。ネット対戦ゲームという下地があってこそのネット対戦ボウリングなのだと思います。
そうだとすると、新聞報道などをきっかけに、類似他業界の仕組みを真似るというのは、ゼロからオリジナルなアイデアを立ち上げるより、賢明だと言えますね。
【今日の教訓】
あなたの企業では、他業界で成功している仕組みを自社に取り入れるのに、どれほど貪欲だろうか。全く新しい仕組みを自社で開発するより、既に他業界で成功している仕組みを取り入れた方が、成功確率が高いかも知れない。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.06.29【17面】>
セミナーの中で、特に強調させていただいたのは、日経記事に掲載されている各企業の施策は、どのような発想から生まれたのかを、自ら考えてみるということです。
発想のプロセスを解明し、それを自らなぞることができれば、自分自身の仕事にも応用できます。日経記事には、その「発想のプロセス」が記されているケースが多いので、非常に助かります。
6月29日付けの日経MJ(流通新聞)に、「遊技施設運営のラウンドワンが昨年8月から導入したネット対戦形式で行うボウリングの利用が好調だ」という記事が掲載されています。
この「ネット対戦ボウリング」は、「全国のラウンドワンの店舗で同時にプレーしている人」が対戦相手となります。スコアのアベレージで対戦相手が自動的に選ばれるので、レベルが同程度で、楽しめます。
記事によれば、「一人でも気軽に同じレベルの相手と対戦できることで、繰り返し利用する人が多く、リピート率は25日現在で70%に達している」そうです。登録会員数が85万人を超えているというから、大成功と評価してよいでしょう。
このアイデアの元について、記事は「開発のきっかけはラウンドワンの中にあるゲームコーナー」だとしています。「ネット対戦を取り入れていたゲーム機器からヒントを得た」ことで、ボウリングのネット対戦を実現しました。
ネット対戦型ゲームの仕組みをボウリングに取り入れたものだということは、記事の指摘を待たずともわかりやすいですね。ですが、記事にしっかりと書いてあると、安心します。
何か新しい取り組みが始まったことが記事で報道された場合、なぜもっと早くそうしなかったのか、についても考えてみるとよいでしょう。そのことについては、記事の解説がないと、わかりにくいかも知れません。
記事は「ボウリングはグループで楽しむものという既成概念にとらわれず1人プレーの仕組みをつくれば、同じような市場はあるとの仮説を立てた」としています。
ゲームをやるなら、一人でやるよりも、誰かと対戦した方がおもしろい。だからこそ、対戦型に価値があります。ですがボウリングは、そもそもグループで楽しむものだから、ネット対戦する意味がありません。それが既成概念だということです。
では、この既成概念は、どのように打ち破られたのでしょうか。世の中全般に、「お一人様」市場が注目されていることがあります。一人でボウリングを楽しみたい人は、きっと多いはず、と推測できたのかも知れません。
とは言え、顧客データを分析し、実際に一人でボウリングをしている人が多いかどうかは、確かめにくかったかのではないでしょうか。ネット
対戦ボウリングのサービスが生まれるまで、その市場は顕在化しなかったからです。
冒頭で述べたセミナーで、ある参加者の方から、記事を読み取る感性を鍛えるにはどうしたらよいか、という質問がありました。その際、記事の文章の一言一句まで、こだわりながら読むことだ、と回答させていただきました。
今回の記事では、「仮説を立てた」という表現が使われています。既に1人プレーの市場が拡大しているのであれば、「仮設」という表現は使わないでしょう。市場が拡大(顕在化)している場合、ネット対戦は、1人プレーする人たちへの付加サービスに過ぎなくなってしまいます。
ネット対戦ゲームが支持されるなら、ネット対戦ボウリングも支持されるはず。そのような仮説が、見事的中したのです。ネット対戦ゲームが存在したからこそ、ネット対戦ボウリングというアイデアも浮かび、成功する確率は高いと読んだわけですね。
では、もし、ネット対戦ゲームが普及しないまま、いきなりネット対戦ボウリングが登場したらどうでしょうか。利用者は戸惑ったのではないでしょうか。ネット対戦ゲームという下地があってこそのネット対戦ボウリングなのだと思います。
そうだとすると、新聞報道などをきっかけに、類似他業界の仕組みを真似るというのは、ゼロからオリジナルなアイデアを立ち上げるより、賢明だと言えますね。
【今日の教訓】
あなたの企業では、他業界で成功している仕組みを自社に取り入れるのに、どれほど貪欲だろうか。全く新しい仕組みを自社で開発するより、既に他業界で成功している仕組みを取り入れた方が、成功確率が高いかも知れない。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.06.29【17面】>
2009年06月18日
資格取得の模擬試験を無料で受けられる!
商品を開発するにあたっては、ターゲット顧客のウォンツやニーズをしっかりと把握する必要があります。欲しくないもの、必要のないものは、誰も買ってくれません。
「欲しい」「必要」について、さらに細かく考えていくと、その度合がどの程度なのか、という話になります。代金を支払う“苦痛”と見合うかどうかです。金を払ってまで「欲しい」「必要」なのか、考えなくてはなりません。
また、「欲しい」「必要」の度合は、常に一定だというわけでもありません。TPOに応じて変化します。たとえば砂漠の中を何日もさまよえば、水に対する「欲しい」「必要」は、極限まで高まります。
商品を売るのなら、「欲しい」「必要」の状態が高まった時点で、タイミングよく提供するのが賢いやり方となります。かと言って、その時が来るまで待つのもしんどいものです。
そこで、「欲しい」「必要」という想いを高めるべく、さまざまな工夫や仕掛けを施すわけです。
6月18日付けの日経産業新聞に、「資格学校を運営する東京リーガルマインド(LEC)は無料で受けられる模擬試験を8月から始める」という記事が掲載されています。
既に4月に試験的に実施したのだそうです。その結果、「事前の想定を上回って新規の入会、受講者が増えている」とのことです。販促効果があると判断し、本格的に展開することになりました。
無料のサービスを提供することで、見込み客リストを構築するというのは、よく使われる手です。とは言え、そのサービスのあり方によって、顧客獲得に結びつけやすかったり、そうでなかったりすることがあります。今回の記事のケースは、どうでしょうか。
模擬試験を受ければ、自分の実力がわかります。LECの場合、現時点では「採点や順位付け」がなされるだけですが、将来的には「合格率を示して合否判定を行うことも検討している」そうです。
実力がわかれば、合格という目標を達成するための課題もわかります。何をしたらいいのかがはっきりすれば、人間、俄然とモチベーションが上がるものです。
モチベーションが上がった時点こそ、すなわち「欲しい」「必要」という想いが高まったタイミングとなります。試験結果を基に、「オススメ」講座でも提示されれば、申し込みたくもなるというものでしょう。
需要を喚起するとは、たとえばLECのこの取り組みのようなことをいうのでしょう。この取り組みについて言えば、見込み客がこれから何をすべきか、そのアクションを明確に認識させる仕掛けとなっています。
見込み客が商品を買わなかった主な理由の一つとして、意外なことに、「買ってくれと言われなかったから」というものがあります。「買う」というアクションをとるべきことを伝えなかったということです。
「買ってくれ」は、顧客に対して外部から働きかけるコミュニケーションで、言ってみれば「外圧」です。一方、模擬試験を受験した結果からわき上がる、「講座で勉強しなくては」という思いは、「内発的」なものです。
販促DMのような「外圧」だけでなく、「内発」の仕掛けが奏功したことが、LECの受講者増の要因だと考えることができるでしょう。見込み客のリスト構築にあたっては、その仕掛けをどう組み込むか、よく考えるべきではないでしょうか。
【今日の教訓】
あなたの企業では、見込み客を集めるにあたり、彼らの内発的な購買モチベーションを高めるために、どのような仕掛けを用意しているだろうか。外圧一辺倒ではなく、内発を誘導することを考えてみよう。
<情報源:日経産業新聞 2009.06.18【17面】>
「欲しい」「必要」について、さらに細かく考えていくと、その度合がどの程度なのか、という話になります。代金を支払う“苦痛”と見合うかどうかです。金を払ってまで「欲しい」「必要」なのか、考えなくてはなりません。
また、「欲しい」「必要」の度合は、常に一定だというわけでもありません。TPOに応じて変化します。たとえば砂漠の中を何日もさまよえば、水に対する「欲しい」「必要」は、極限まで高まります。
商品を売るのなら、「欲しい」「必要」の状態が高まった時点で、タイミングよく提供するのが賢いやり方となります。かと言って、その時が来るまで待つのもしんどいものです。
そこで、「欲しい」「必要」という想いを高めるべく、さまざまな工夫や仕掛けを施すわけです。
6月18日付けの日経産業新聞に、「資格学校を運営する東京リーガルマインド(LEC)は無料で受けられる模擬試験を8月から始める」という記事が掲載されています。
既に4月に試験的に実施したのだそうです。その結果、「事前の想定を上回って新規の入会、受講者が増えている」とのことです。販促効果があると判断し、本格的に展開することになりました。
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モチベーションが上がった時点こそ、すなわち「欲しい」「必要」という想いが高まったタイミングとなります。試験結果を基に、「オススメ」講座でも提示されれば、申し込みたくもなるというものでしょう。
需要を喚起するとは、たとえばLECのこの取り組みのようなことをいうのでしょう。この取り組みについて言えば、見込み客がこれから何をすべきか、そのアクションを明確に認識させる仕掛けとなっています。
見込み客が商品を買わなかった主な理由の一つとして、意外なことに、「買ってくれと言われなかったから」というものがあります。「買う」というアクションをとるべきことを伝えなかったということです。
「買ってくれ」は、顧客に対して外部から働きかけるコミュニケーションで、言ってみれば「外圧」です。一方、模擬試験を受験した結果からわき上がる、「講座で勉強しなくては」という思いは、「内発的」なものです。
販促DMのような「外圧」だけでなく、「内発」の仕掛けが奏功したことが、LECの受講者増の要因だと考えることができるでしょう。見込み客のリスト構築にあたっては、その仕掛けをどう組み込むか、よく考えるべきではないでしょうか。
【今日の教訓】
あなたの企業では、見込み客を集めるにあたり、彼らの内発的な購買モチベーションを高めるために、どのような仕掛けを用意しているだろうか。外圧一辺倒ではなく、内発を誘導することを考えてみよう。
<情報源:日経産業新聞 2009.06.18【17面】>
2009年06月16日
最近のレトルトカレー、おいしいですよね。
どうすれば、商品を買ってもらえるのか。どの企業も、頭を悩ませている課題でしょう。品質を向上させたり、価格を下げたりと、打ち手をいろいろと考えてみたりします。
品質と価格については、商品そのものに焦点を当てた対策ですが、商品が売れるようになる要因は、他にもたくさんあります。たとえば「時流」というものがあります。
特定商品の魅力の度合は、環境の変化に連動します。つまり、魅力度が常に一定だということはないのです。景気やライフスタイルが変われば、今まで脚光を浴びなかった商品が注目されたりします。
また、商品の魅力度が高くても、十分に認知されなければ、なかなか買ってもらえません。セールスプロモーションの技術が問われる場面です。市場を啓蒙する必要もあるでしょう。
6月14日付けの日経MJ(流通新聞)に、「レトルトカレー市場が拡大している」という記事が掲載されています。よく売れているらしいです。このケースでの要因は何でしょうか。
記事によれば、まず、「景気後退に伴い外食を控えて自宅で食事をする消費者が増えたことや、パスタやパンの値上げで相対的に値段の安い米が見直されたことが背景にある」とのことです。
これは「時流」という要因です。「2008年の市場規模は前年比7.7%増の765億円」だそうです。2009年については、さらに「4.6%増の800億円を予想」されています。
元々、日本人はカレーが好きだということがありますし、時流の追い風もあるのですが、メーカーの努力もあります。レトルトカレー以外でも
自宅で食事するとなれば、選択肢は他にもあります。
記事の中で興味を引いたのは、「レトルトカレーの課題は『おいしくないと思い込んでいる人が少なくない』」という、ハウス食品担当者の言葉です。
私自身、レトルトカレーは結構好きで、そのような認識はなかったのですが、世の中一般では、そうなのかも知れません。ですが、「今は格段においしくなっている」と、記事は伝えています。
そのような認識を改めるためには、やはり「試食販売」を行なうべきだという話になります。明治製菓の担当者は、「食べてみておいしさを知り、繰り返し購入する人もいる」とコメントしています。
記事によれば、「何かのきっかけでおいしさを実感し、その後繰り返し購入する消費者が増えつつある」とのことです。マーケティングをするなら、この「きっかけ」の機会を演出することに知恵を絞る必要があるわけです。
試食がきっかけというのは、わかりやすいですが、時流もまた、きっかけとなり得ます。たとえば記事は、「レトルトカレーが保存食として見直されている」と伝えています。
災害や、昨今の新型インフルエンザの流行が、「保存食」への注目を高めるわけですが、それらも「きっかけ」です。企業努力によるものなのか、単に時流によるものなのか、判別しがたい面もありますが、商品が従来よりも売れるようになるには、何らかの「きっかけ」が必要であることは明らかです。
では、何が「きっかけ」となるのでしょうか。インフルエンザ流行でマスクが爆発的に売れるといった、わかりやすいケースもありますが、そうでない場合もあります。レトルトカレーについては、比較的わかりにくい部類に属するかも知れません。
商品が大きく売れる「きっかけ」を解明することは、マーケティング担当者にとって、重要な課題であり、洞察力や発想力が問われる場面です。少なくとも、「きっかけ」を解明しようという意識を、常に持ち続けておくべきであることは、間違いないはずです。
【今日の教訓】
あなたの企業の商品の売れ行きが向上するとしたら、何がその「きっかけ」となり得るだろうか。漫然と売れ行き動向を追いかけるだけではいけない。常にその「きっかけ」を解明する努力を続けよう。
<情報源:日経MJ(流通)新聞 2009.06.14【2面】>
品質と価格については、商品そのものに焦点を当てた対策ですが、商品が売れるようになる要因は、他にもたくさんあります。たとえば「時流」というものがあります。
特定商品の魅力の度合は、環境の変化に連動します。つまり、魅力度が常に一定だということはないのです。景気やライフスタイルが変われば、今まで脚光を浴びなかった商品が注目されたりします。
また、商品の魅力度が高くても、十分に認知されなければ、なかなか買ってもらえません。セールスプロモーションの技術が問われる場面です。市場を啓蒙する必要もあるでしょう。
6月14日付けの日経MJ(流通新聞)に、「レトルトカレー市場が拡大している」という記事が掲載されています。よく売れているらしいです。このケースでの要因は何でしょうか。
記事によれば、まず、「景気後退に伴い外食を控えて自宅で食事をする消費者が増えたことや、パスタやパンの値上げで相対的に値段の安い米が見直されたことが背景にある」とのことです。
これは「時流」という要因です。「2008年の市場規模は前年比7.7%増の765億円」だそうです。2009年については、さらに「4.6%増の800億円を予想」されています。
元々、日本人はカレーが好きだということがありますし、時流の追い風もあるのですが、メーカーの努力もあります。レトルトカレー以外でも
自宅で食事するとなれば、選択肢は他にもあります。
記事の中で興味を引いたのは、「レトルトカレーの課題は『おいしくないと思い込んでいる人が少なくない』」という、ハウス食品担当者の言葉です。
私自身、レトルトカレーは結構好きで、そのような認識はなかったのですが、世の中一般では、そうなのかも知れません。ですが、「今は格段においしくなっている」と、記事は伝えています。
そのような認識を改めるためには、やはり「試食販売」を行なうべきだという話になります。明治製菓の担当者は、「食べてみておいしさを知り、繰り返し購入する人もいる」とコメントしています。
記事によれば、「何かのきっかけでおいしさを実感し、その後繰り返し購入する消費者が増えつつある」とのことです。マーケティングをするなら、この「きっかけ」の機会を演出することに知恵を絞る必要があるわけです。
試食がきっかけというのは、わかりやすいですが、時流もまた、きっかけとなり得ます。たとえば記事は、「レトルトカレーが保存食として見直されている」と伝えています。
災害や、昨今の新型インフルエンザの流行が、「保存食」への注目を高めるわけですが、それらも「きっかけ」です。企業努力によるものなのか、単に時流によるものなのか、判別しがたい面もありますが、商品が従来よりも売れるようになるには、何らかの「きっかけ」が必要であることは明らかです。
では、何が「きっかけ」となるのでしょうか。インフルエンザ流行でマスクが爆発的に売れるといった、わかりやすいケースもありますが、そうでない場合もあります。レトルトカレーについては、比較的わかりにくい部類に属するかも知れません。
商品が大きく売れる「きっかけ」を解明することは、マーケティング担当者にとって、重要な課題であり、洞察力や発想力が問われる場面です。少なくとも、「きっかけ」を解明しようという意識を、常に持ち続けておくべきであることは、間違いないはずです。
【今日の教訓】
あなたの企業の商品の売れ行きが向上するとしたら、何がその「きっかけ」となり得るだろうか。漫然と売れ行き動向を追いかけるだけではいけない。常にその「きっかけ」を解明する努力を続けよう。
<情報源:日経MJ(流通)新聞 2009.06.14【2面】>
2009年06月09日
絵画の価格をサイズで決める
週末起業フォーラム会員に対するメールでのコンサルティングを行なっています。よくある質問として、「この商品・サービスは、価格をいくらにしたらよいでしょうか」というものがあります。
基本的には、同業他社を調べて相場を把握することと、かかる原価・経費を積み上げてみることの両面で考えるようにアドバイスします。商品・サービスの種類が多岐にわたる、あるいはカスタムメイドの場合は、積算基準も設定する必要があります。
いずれにしろ、価格設定というのは、悩ましい問題です。積算基準を設定して見積もってみると、一部の商品については妥当な価格水準となるが、他の商品については不適切、といったことがあり得ます。
積算の基準は、いわゆる「○○あたり」のような設定になるのが一般的でしょう。コンサルティングやコーチングなら、「1時間あたり」あるいは「1ヶ月あたり」といった具合です。
コンサルティング/コーチングのようなサービスの場合、誰もが認める積算基準が存在するわけではありません。ベテランと駆け出しとで、価格が全く同じというのもおかしいでしょう。
物販でも、絵画のような美術品では、価格設定は明快ではありません。コンサルタントやコーチのように、アーチストの技量は千差万別ですし、作品ごとの評価もまちまちとなりがちです。ですが、基準を設定しようと思えば、できないことはないようです。
6月9日付けの日経産業新聞に、カヤックという会社が運営する「アートメーター」というサイトについての記事が掲載されています。このサイトは、「絵画の寸法で販売価格が決まる方式に特徴がある」のだそうです。
この記事の趣旨は、アートメーターが「海外展開に乗り出す」ということです。「日本文化に興味を持つ外国人からの購入希望があり、需要が高まると判断した」という背景があります。
ですが、今回は、「絵画の寸法で販売価格が決まる」という点に着目したいと思います。上述のように、価格を決定する基準は悩ましいと思うからです。
実を言えば、寸法で絵画の価格を決めるというのは、アートメーターの専売特許というわけではありません。「号あたりいくら」という目安は、以前から知られています。(もちろん、画家のレベルにより、「号あたり」の価格水準は変動します)
実際のところ、どうなのでしょうか。サイズが大きければ、絵の具やキャンバスの価格(原価)は高くなります。ですが、高額な絵画の価格からすれば、誤差の範囲程度の話です。
絵を描く手間については、やはり大きい方がかかりそうです。とは言え、2倍のサイズの絵を描くのに、2倍の時間がかかるというわけではないようです。逆に、極端に小さいサイズの絵を描く方が、よほど手間がかかります。
このように、サイズで価格を決めるのは、現実のところ、原価からみた妥当性は、必ずしも高くありません。ですが視点を変え、買い手の立場からみると、非常にわかりやすい価格積算方式だということになります。
アートメーターのサイトをみると、「絵の測り売り」と謳っていて、記事で述べられているように、それを特徴として打ち出しています。価格が「わかりやすい」ことは、アドバンテージなのです。
一皿100円の回転寿司は、価格のわかりやすさが支持され、日本人(そして世界中で)の外食に大きな影響を与えました。「時価」のような不透明性を排除したアイデアの勝利だと言えるでしょう。
絵画もまた、かつての寿司と同じように、素人には、いくらなのか見当がつかない商品であったりします。価格決定の透明性を高める余地があるわけです。
商品・サービス価格の決定は悩ましく、価格設定基準も明確にしたいという気持ちは、売り手側が抱える問題です。ですが一方、実は買い手にも、それは求められているのです。
特に「わかりやすい」ことが必要ですね。その観点で、価格水準のみならず、価格設定方法の透明性についても、考え直してみてはどうでしょうか。
【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品・サービスの価格設定基準は、顧客からみてわかりやすいものだろうか。「○○あたりいくら」のように、思いっきりわかりやすくするだけでも、自社の特徴を強力に打ち出していくことができる。見直してみよう。
<参考:日経産業新聞 2009.06.09【4面】>
基本的には、同業他社を調べて相場を把握することと、かかる原価・経費を積み上げてみることの両面で考えるようにアドバイスします。商品・サービスの種類が多岐にわたる、あるいはカスタムメイドの場合は、積算基準も設定する必要があります。
いずれにしろ、価格設定というのは、悩ましい問題です。積算基準を設定して見積もってみると、一部の商品については妥当な価格水準となるが、他の商品については不適切、といったことがあり得ます。
積算の基準は、いわゆる「○○あたり」のような設定になるのが一般的でしょう。コンサルティングやコーチングなら、「1時間あたり」あるいは「1ヶ月あたり」といった具合です。
コンサルティング/コーチングのようなサービスの場合、誰もが認める積算基準が存在するわけではありません。ベテランと駆け出しとで、価格が全く同じというのもおかしいでしょう。
物販でも、絵画のような美術品では、価格設定は明快ではありません。コンサルタントやコーチのように、アーチストの技量は千差万別ですし、作品ごとの評価もまちまちとなりがちです。ですが、基準を設定しようと思えば、できないことはないようです。
6月9日付けの日経産業新聞に、カヤックという会社が運営する「アートメーター」というサイトについての記事が掲載されています。このサイトは、「絵画の寸法で販売価格が決まる方式に特徴がある」のだそうです。
この記事の趣旨は、アートメーターが「海外展開に乗り出す」ということです。「日本文化に興味を持つ外国人からの購入希望があり、需要が高まると判断した」という背景があります。
ですが、今回は、「絵画の寸法で販売価格が決まる」という点に着目したいと思います。上述のように、価格を決定する基準は悩ましいと思うからです。
実を言えば、寸法で絵画の価格を決めるというのは、アートメーターの専売特許というわけではありません。「号あたりいくら」という目安は、以前から知られています。(もちろん、画家のレベルにより、「号あたり」の価格水準は変動します)
実際のところ、どうなのでしょうか。サイズが大きければ、絵の具やキャンバスの価格(原価)は高くなります。ですが、高額な絵画の価格からすれば、誤差の範囲程度の話です。
絵を描く手間については、やはり大きい方がかかりそうです。とは言え、2倍のサイズの絵を描くのに、2倍の時間がかかるというわけではないようです。逆に、極端に小さいサイズの絵を描く方が、よほど手間がかかります。
このように、サイズで価格を決めるのは、現実のところ、原価からみた妥当性は、必ずしも高くありません。ですが視点を変え、買い手の立場からみると、非常にわかりやすい価格積算方式だということになります。
アートメーターのサイトをみると、「絵の測り売り」と謳っていて、記事で述べられているように、それを特徴として打ち出しています。価格が「わかりやすい」ことは、アドバンテージなのです。
一皿100円の回転寿司は、価格のわかりやすさが支持され、日本人(そして世界中で)の外食に大きな影響を与えました。「時価」のような不透明性を排除したアイデアの勝利だと言えるでしょう。
絵画もまた、かつての寿司と同じように、素人には、いくらなのか見当がつかない商品であったりします。価格決定の透明性を高める余地があるわけです。
商品・サービス価格の決定は悩ましく、価格設定基準も明確にしたいという気持ちは、売り手側が抱える問題です。ですが一方、実は買い手にも、それは求められているのです。
特に「わかりやすい」ことが必要ですね。その観点で、価格水準のみならず、価格設定方法の透明性についても、考え直してみてはどうでしょうか。
【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品・サービスの価格設定基準は、顧客からみてわかりやすいものだろうか。「○○あたりいくら」のように、思いっきりわかりやすくするだけでも、自社の特徴を強力に打ち出していくことができる。見直してみよう。
<参考:日経産業新聞 2009.06.09【4面】>
2009年06月04日
「取りこぼし」の痛手は往復ビンタ
不景気にあって、売上を確保することは容易ではありません。どの企業も、そのために知恵を絞っています。たとえば食品スーパーでは、値下げを効果的に行なっています。
やはり、値下げするに限るのでしょうか。いや、別の考え方もあるに違いありません。値下げして需要を刺激する前に、取りこぼし、すなわち機会損失を防止することも必要でしょう。
6月4日付けの日経産業新聞に、「オートバックスセブンとイエローハットのカー用品大手2社が、集客策に一段と力を入れている」という記事が掲載されています。新車販売が落ち込み、カー用品の業界にも、その影響があるとのことです。
イエローハットがとっている対策は、「タイヤ売り場を抜本的に見直した」ことです。具体的には、タイヤ売り場の面積を広げ、品揃えを充実しています。
なぜ、タイヤなのでしょうか。イエローハットの社長によれば、「タイヤは確実な需要が見込めるうえ、シェアを拡大することで販売数量も伸ばせる」とのことです。
「確実な需要が見込める」商品は、取りこぼしてはいけません。不景気における売上確保対策として、欠かせない着眼点です。景気によって需要が左右される商品は、不景気時には狙いにくいものです。
一方、この対策の割を食う存在が、ガソリンスタンドです。セルフサービスのガソリンスタンドが増えていることで、「タイヤの販売数量も減っている」。イエローハットは、その需要を確実に取り込むことを狙っているのです。
ガソリンスタンドのセルフ化も値下げ策になりますが、その分、確実に需要が見込めるタイヤの販売を取りこぼしているとすれば、不景気時の売上確保対策としては、何とも皮肉な結果と言えるかも知れません。(もっとも、ガソリンも確実に需要が見込める商品ですが)
記事が取り上げているもう一社、オートバックスの取り組みは、「車検サービスの拡充」です。「店舗に併設する車検工場を増やし、車検のために来店した客にカー用品を売る」のが狙いです。
「車検はタイヤ同様に定期的な需要が見込める」と記事は指摘しています。確実に定期的な需要が見込める商品に着目するという点で、やっていることは違いますが、同じ発想で取り組んでいるのが興味深いです。
販売の機会損失には、単純に商品が購入されない場合と、他社で購入されるケースの両方が考えられます。確実に需要が見込まれる商品の場合、必ずどこかで購入しなければならないので、後者に該当します。
「取りこぼし」という言葉のニュアンスは、後者の意味合いの方が強いでしょう。「取りこぼし」には、「もったいない」という気持ちが込められていますが、まったく購入されないなら、そのような気持ちは起きにくいでしょう。
だとすると、販売における「取りこぼし」は、単純に自社の収益のマイナスになるだけでなく、ライバルにとってのプラス収益になってしまうわけです。その点、「取りこぼし」の発生は、往復ビンタの痛手なのです。
イエローハットの社長が「シェアを拡大すること」に言及したのは、その意味があります。「取りこぼし」については、単なる「売り逃し」以上の深刻さで受け止めなければならないのです。
【今日の教訓】
あなたの企業では、売上確保対策として、どのような手を打っているだろうか。確実に需要の見込める商品については、「取りこぼし」のないようにすることだ。「取りこぼし」は、ライバルを利し、シェアの低下を招く。深刻に受け止めよう。
<参考:日経産業新聞 2009.06.04【14面】>
やはり、値下げするに限るのでしょうか。いや、別の考え方もあるに違いありません。値下げして需要を刺激する前に、取りこぼし、すなわち機会損失を防止することも必要でしょう。
6月4日付けの日経産業新聞に、「オートバックスセブンとイエローハットのカー用品大手2社が、集客策に一段と力を入れている」という記事が掲載されています。新車販売が落ち込み、カー用品の業界にも、その影響があるとのことです。
イエローハットがとっている対策は、「タイヤ売り場を抜本的に見直した」ことです。具体的には、タイヤ売り場の面積を広げ、品揃えを充実しています。
なぜ、タイヤなのでしょうか。イエローハットの社長によれば、「タイヤは確実な需要が見込めるうえ、シェアを拡大することで販売数量も伸ばせる」とのことです。
「確実な需要が見込める」商品は、取りこぼしてはいけません。不景気における売上確保対策として、欠かせない着眼点です。景気によって需要が左右される商品は、不景気時には狙いにくいものです。
一方、この対策の割を食う存在が、ガソリンスタンドです。セルフサービスのガソリンスタンドが増えていることで、「タイヤの販売数量も減っている」。イエローハットは、その需要を確実に取り込むことを狙っているのです。
ガソリンスタンドのセルフ化も値下げ策になりますが、その分、確実に需要が見込めるタイヤの販売を取りこぼしているとすれば、不景気時の売上確保対策としては、何とも皮肉な結果と言えるかも知れません。(もっとも、ガソリンも確実に需要が見込める商品ですが)
記事が取り上げているもう一社、オートバックスの取り組みは、「車検サービスの拡充」です。「店舗に併設する車検工場を増やし、車検のために来店した客にカー用品を売る」のが狙いです。
「車検はタイヤ同様に定期的な需要が見込める」と記事は指摘しています。確実に定期的な需要が見込める商品に着目するという点で、やっていることは違いますが、同じ発想で取り組んでいるのが興味深いです。
販売の機会損失には、単純に商品が購入されない場合と、他社で購入されるケースの両方が考えられます。確実に需要が見込まれる商品の場合、必ずどこかで購入しなければならないので、後者に該当します。
「取りこぼし」という言葉のニュアンスは、後者の意味合いの方が強いでしょう。「取りこぼし」には、「もったいない」という気持ちが込められていますが、まったく購入されないなら、そのような気持ちは起きにくいでしょう。
だとすると、販売における「取りこぼし」は、単純に自社の収益のマイナスになるだけでなく、ライバルにとってのプラス収益になってしまうわけです。その点、「取りこぼし」の発生は、往復ビンタの痛手なのです。
イエローハットの社長が「シェアを拡大すること」に言及したのは、その意味があります。「取りこぼし」については、単なる「売り逃し」以上の深刻さで受け止めなければならないのです。
【今日の教訓】
あなたの企業では、売上確保対策として、どのような手を打っているだろうか。確実に需要の見込める商品については、「取りこぼし」のないようにすることだ。「取りこぼし」は、ライバルを利し、シェアの低下を招く。深刻に受け止めよう。
<参考:日経産業新聞 2009.06.04【14面】>
2009年06月03日
人気のある求職者がわかるシステム
昨日の当ブログでは、新聞記事の読み解く際は、フレームワークを当てはめてみるとよいとお奨めしました。もう少し大きくとらえ、ビジネス書等で学んだ理論やノウハウを当てはめるといったことでもよいでしょう。
記事を読み、「どこかで読んだような気がする」と気づくと、当てはめることがしやすくなります。昨日も指摘したように、双方の「共通点」や「類似性」をどれだけ発見できるかは、発想力を発揮するポイントです。
しばらく前に、「『みんなの意見』は案外正しい」という本を読みました(ジェームズ・スロウィッキー著、角川書店)。そして今日は、この本を思い出させてくれる記事をみつけました。
6月3日付けの日経産業新聞に、「求人サイト向けの新しい検索システム」が開発されたという記事が掲載されています。ホットリンクというソフトウエア開発会社によるものです。
このシステムでは、条件を設定して、求人企業が自社に合った求職者を探すことができるのですが、その際、その求職者に対する他社の動きも知ることができます。
それにより、「他社の動向を参考に求職者の人気などを確かめることができ、効果的に採用につなげられる」とのことです。人気のある求職者なら、アプローチする価値はあるはずだと確認できます。
採用への自信なさげな姿勢は、いかがなものかと思わないでもありませんが、「『みんなの意見』は案外正しい」と考えると、理に適った話なのかも知れません。
このシステムでは、「相手の企業がほかにどんな人材を候補に挙げているのかも表示する」そうです。「同じ人材を採用しようとしている会社の動向を確認することで、条件による絞り込みだけでは取りこぼしていた人材を発掘できる」効果があるのだそうです。
これは、「この本を買った人は・・」のアマゾンの仕組みと同様ですね。この人材を採用しようとしている企業は、この人材にもアプローチしています、という情報に読み換えることができます。結果として、芋づる式に本や人材に次々と当たっていくことになるわけです。
このように、実は「みんなの意見」の原理は、マーケティングなどでも使われていることがわかります。「売れ筋ランキング」を掲示することが効果的だと言われますが、それも「みんなの意見」を集約したものです。
確かに、自分だけの考えでなく、他者の知恵を上手に活用するというのは、基本的に賢明な行動でしょう。それがシステム化され、さらにそれが「見える化」されたというわけです。
社内の業務を「見える化」することの重要性は、ここ何年も強調されてきました。今回の記事は、顧客同士の互いの振る舞いを「見える化」することでの効果を述べています。「見える化」、恐るべし、ですね。
学校の試験結果でも、成績を学内に貼り出されるとなると、勉強に対する緊張感が違ってきます。それもまた、「見える化」効果だと言えるでしょう。
考えてみれば、せっかくの「みんなの意見」も、それらが「見える化」されなければ、活用のしようがありません。「見える化」するなら「みんなの意見」として活用できるように仕立てることを考えてみるとよいのでしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業で進めている「見える化」は、いったい誰のためのものだろうか。顧客視点での「見える化」を上手に進めることは、マーケティングにプラスの効果をもたらす。「見える化」を社内だけのことに留めていては、もったいない。
<参考:日経産業新聞 2009.06.03【4面】>
記事を読み、「どこかで読んだような気がする」と気づくと、当てはめることがしやすくなります。昨日も指摘したように、双方の「共通点」や「類似性」をどれだけ発見できるかは、発想力を発揮するポイントです。
しばらく前に、「『みんなの意見』は案外正しい」という本を読みました(ジェームズ・スロウィッキー著、角川書店)。そして今日は、この本を思い出させてくれる記事をみつけました。
6月3日付けの日経産業新聞に、「求人サイト向けの新しい検索システム」が開発されたという記事が掲載されています。ホットリンクというソフトウエア開発会社によるものです。
このシステムでは、条件を設定して、求人企業が自社に合った求職者を探すことができるのですが、その際、その求職者に対する他社の動きも知ることができます。
それにより、「他社の動向を参考に求職者の人気などを確かめることができ、効果的に採用につなげられる」とのことです。人気のある求職者なら、アプローチする価値はあるはずだと確認できます。
採用への自信なさげな姿勢は、いかがなものかと思わないでもありませんが、「『みんなの意見』は案外正しい」と考えると、理に適った話なのかも知れません。
このシステムでは、「相手の企業がほかにどんな人材を候補に挙げているのかも表示する」そうです。「同じ人材を採用しようとしている会社の動向を確認することで、条件による絞り込みだけでは取りこぼしていた人材を発掘できる」効果があるのだそうです。
これは、「この本を買った人は・・」のアマゾンの仕組みと同様ですね。この人材を採用しようとしている企業は、この人材にもアプローチしています、という情報に読み換えることができます。結果として、芋づる式に本や人材に次々と当たっていくことになるわけです。
このように、実は「みんなの意見」の原理は、マーケティングなどでも使われていることがわかります。「売れ筋ランキング」を掲示することが効果的だと言われますが、それも「みんなの意見」を集約したものです。
確かに、自分だけの考えでなく、他者の知恵を上手に活用するというのは、基本的に賢明な行動でしょう。それがシステム化され、さらにそれが「見える化」されたというわけです。
社内の業務を「見える化」することの重要性は、ここ何年も強調されてきました。今回の記事は、顧客同士の互いの振る舞いを「見える化」することでの効果を述べています。「見える化」、恐るべし、ですね。
学校の試験結果でも、成績を学内に貼り出されるとなると、勉強に対する緊張感が違ってきます。それもまた、「見える化」効果だと言えるでしょう。
考えてみれば、せっかくの「みんなの意見」も、それらが「見える化」されなければ、活用のしようがありません。「見える化」するなら「みんなの意見」として活用できるように仕立てることを考えてみるとよいのでしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業で進めている「見える化」は、いったい誰のためのものだろうか。顧客視点での「見える化」を上手に進めることは、マーケティングにプラスの効果をもたらす。「見える化」を社内だけのことに留めていては、もったいない。
<参考:日経産業新聞 2009.06.03【4面】>
2009年06月02日
大手百貨店は「非百貨店事業」で勝負する!
日経記事を読み解くには、フレームワークの在庫を持っておくことが重要です。フレームワークを記事に当てはめると、登場する企業が何をどうしようとしているのか、わかりやすくなります。
私が最もよく使うフレームワークは、「事業単位」の考え方です。フレームワークというより、戦略を考える上での大前提の考え方だと言った方がよいかも知れません。
業績を上げようと思うなら、儲かる事業単位に集中し、儲からない事業単位は、やめればよいのです。あるいは、成長が見込まれるかどうかという判断もあるでしょう。
そう考えると、実に簡単な話だ。ただ現実には、事業単位が相互に補完関係にあったりすると、どちらかをやめるということは、出来なくなったりします。そこが知恵のひねりどころであり、経営判断の妙ですね。
また、その手前の問題として、事業単位をどのように設定するかは、場合によっては悩ましいものです。製品別・市場別・販売チャネル別が基本となりますが、価格帯別やサイズ別といった、少しひねった観点も必要になったりします。
日経記事に登場する企業は、どのように事業単位を設定しているのでしょうか。そのような観点で記事を読み解いてみましょう。
たとえば6月2日付けの日本経済新聞に掲載されている大手百貨店の業績に関する記事がそうです。
「大手百貨店の2009年度の連結業績は不動産や金融など『非百貨店』事業で格差が開きそうだ」とあります。なるほど、「百貨店」と「非百貨店」という観点で、事業単位を分けて考えているわけですね。
日経記事を経営や仕事に活用する場合、記事を「抽象化」して考える必要があります。今回の記事の場合、自社は百貨店ではないから関係ない、としてしまえば、それで終わりです、ハイ。
ですが、抽象化して考えると、「メイン事業」と「非メイン事業」という分け方になるでしょう。そして、「非メイン事業」で企業間格差が生まれるというわけです。
百貨店なら百貨店事業で競うのが本来ではないでしょうか。この記事を読んだら、そんな「驚き」の感覚を抱いてもよいと思います。(日経記事に、いちいち感動したり驚いたりしながら読むと、情報感性が高まります。たぶん(^^;)。)
では、自社についてはどうでしょうか。「メイン事業」で他社としのぎを削っています。ですが実は、「非メイン事業」を無視してはいけないのかも知れません。意外とそれが、利益の源泉であったりもしそうです。
同じようなことで、ハンバーガーショップが、「メイン商品」と思われるハンバーガーではなく、ポテトやドリンクで利益を稼いでいるという話も聞きます。(全く違うことのようで、実は共通点があることを見出せるようになると、かなり発想力が鍛えられていると言えます)
私が以前にコンサルした企業でも、メイン商品でないと軽視されていたものが、後になって大化けした例があります。事業単位としては「その他」とくくられていたのですから、すっかり見落としていたわけですね。
今回の記事は、「高島屋が不動産開発事業を第2の柱に位置づけるなど、非百貨店事業を強化する動きが広がるとみられている」と結んでいます。
メイン事業・非メイン事業というくくりは、あくまでもその時点のことであり、場合によっては思い込みや思い入れだったりもします。売上実績データなどを丹念に洗っていくと、もしかしたら将来のメイン事業となり得る事業単位が埋もれているのを発見するかも知れないですよ。
【今日の教訓】
あなたの企業では、自社の事業単位をどのように設定しているだろうか。「非メイン」とみなしている事業単位を、おろそかに扱っていたりはしないだろうか。メイン・非メインの区分は、現時点でのものに過ぎない。将来の飯の種を見逃さないようにしよう。
<参考:日本経済新聞 2009.06.02【15面】>
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今回のセミナーでは、私の新聞記事の読み方をご紹介すると共に、そこから新たなビジネス発想を生むための具体的な手法や事例を惜しみなくお伝えします。
私が最もよく使うフレームワークは、「事業単位」の考え方です。フレームワークというより、戦略を考える上での大前提の考え方だと言った方がよいかも知れません。
業績を上げようと思うなら、儲かる事業単位に集中し、儲からない事業単位は、やめればよいのです。あるいは、成長が見込まれるかどうかという判断もあるでしょう。
そう考えると、実に簡単な話だ。ただ現実には、事業単位が相互に補完関係にあったりすると、どちらかをやめるということは、出来なくなったりします。そこが知恵のひねりどころであり、経営判断の妙ですね。
また、その手前の問題として、事業単位をどのように設定するかは、場合によっては悩ましいものです。製品別・市場別・販売チャネル別が基本となりますが、価格帯別やサイズ別といった、少しひねった観点も必要になったりします。
日経記事に登場する企業は、どのように事業単位を設定しているのでしょうか。そのような観点で記事を読み解いてみましょう。
たとえば6月2日付けの日本経済新聞に掲載されている大手百貨店の業績に関する記事がそうです。
「大手百貨店の2009年度の連結業績は不動産や金融など『非百貨店』事業で格差が開きそうだ」とあります。なるほど、「百貨店」と「非百貨店」という観点で、事業単位を分けて考えているわけですね。
日経記事を経営や仕事に活用する場合、記事を「抽象化」して考える必要があります。今回の記事の場合、自社は百貨店ではないから関係ない、としてしまえば、それで終わりです、ハイ。
ですが、抽象化して考えると、「メイン事業」と「非メイン事業」という分け方になるでしょう。そして、「非メイン事業」で企業間格差が生まれるというわけです。
百貨店なら百貨店事業で競うのが本来ではないでしょうか。この記事を読んだら、そんな「驚き」の感覚を抱いてもよいと思います。(日経記事に、いちいち感動したり驚いたりしながら読むと、情報感性が高まります。たぶん(^^;)。)
では、自社についてはどうでしょうか。「メイン事業」で他社としのぎを削っています。ですが実は、「非メイン事業」を無視してはいけないのかも知れません。意外とそれが、利益の源泉であったりもしそうです。
同じようなことで、ハンバーガーショップが、「メイン商品」と思われるハンバーガーではなく、ポテトやドリンクで利益を稼いでいるという話も聞きます。(全く違うことのようで、実は共通点があることを見出せるようになると、かなり発想力が鍛えられていると言えます)
私が以前にコンサルした企業でも、メイン商品でないと軽視されていたものが、後になって大化けした例があります。事業単位としては「その他」とくくられていたのですから、すっかり見落としていたわけですね。
今回の記事は、「高島屋が不動産開発事業を第2の柱に位置づけるなど、非百貨店事業を強化する動きが広がるとみられている」と結んでいます。
メイン事業・非メイン事業というくくりは、あくまでもその時点のことであり、場合によっては思い込みや思い入れだったりもします。売上実績データなどを丹念に洗っていくと、もしかしたら将来のメイン事業となり得る事業単位が埋もれているのを発見するかも知れないですよ。
【今日の教訓】
あなたの企業では、自社の事業単位をどのように設定しているだろうか。「非メイン」とみなしている事業単位を、おろそかに扱っていたりはしないだろうか。メイン・非メインの区分は、現時点でのものに過ぎない。将来の飯の種を見逃さないようにしよう。
<参考:日本経済新聞 2009.06.02【15面】>
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今回のセミナーでは、私の新聞記事の読み方をご紹介すると共に、そこから新たなビジネス発想を生むための具体的な手法や事例を惜しみなくお伝えします。
2009年05月27日
新聞記事から経営・仕事のヒントをみつけるコツとは?
来月開催する「新聞記事で鍛える【超】ビジネス発想力強化セミナー」の準備を着々と進めています。既に多数の参加お申し込みをいただいています。ありがとうございます。
参加お申し込みのメールのコメント欄に、日経記事は毎日チェックしているが、仕事に役立てるノウハウがわからない、といった書き込みが散見されます。
そのノウハウ、セミナーでは、きっちりとお話ししたいと思っています。ノウハウの一つとして、記事を「抽象化する」という手順を踏むことがあります。
要は、自分の仕事で応用可能なエッセンスを抽出するということです。食事を摂取した場合で言えば、いったん消化して栄養素のレベルに分解してから、肉体に再構成するというイメージになるでしょうか。
たとえば、建設業界などでは、リフォーム市場がおおいに注目されてきています。建設業界の話として受け止めると、業界が違えば、特に役立つ記事ではないかも知れません。
ですが、「新品」ではなく「修繕」の市場が注目されている、と抽象化すれば、他のほとんどの業界で通用する話になります。5月27日付けの日本経済新聞にも、そのような記事が掲載されています。
「人材派遣や採用支援を手がけるビー・スタイルは採用活動用に作った映像の修理サービスを始める」のだそうです。建設業界とは全く異なる業界ですが、「修繕」の市場に注目するという点では、同じです。
記事によれば、「事業部名の変更や登場人物の異動などで修正が必要な場合に1万円から対応する」そうです。ほんの一部分の修正のために、すべて録り直すというのは、さすがにムダですね。
昨今の景気を考え、「採用コストが限られる中、いったん、「新品」ではなく「修繕」の市場が注目されている、と抽象化すれば、他のほとんどの業界で通用する話になります。5月27日付けの日本経済新聞にも、そのような記事が掲載されています。
「人材派遣や採用支援を手がけるビー・スタイルは採用活動用に作った映像の修理サービスを始める」のだそうです。建設業界とは全く異なる業界ですが、「修繕」の市場に注目するという点では、同じです。
記事によれば、「事業部名の変更や登場人物の異動などで修正が必要な場合に1万円から対応する」そうです。ほんの一部分の修正のために、すべて録り直すというのは、さすがにムダですね。
昨今の景気を考え、「採用コストが限られる中、いったん制作した映像を数年間使用したい企業が多いと判断した」とのことです。洋服などでもそうですが、「修繕」や「リサイクル」「リユース」は、今や社会全体のキーワードですし、自社・自業界でも例外ではないはずです。
このように、日経記事を読む際は、「同じ」こと、すなわち自社や自業界との共通点を探し、着目することで、経営や仕事に役立てやすくなります。
ビー・スタイルがこのサービスを発想したのは、純粋に「もったいない」という顧客の声に耳を傾けた結果だったのかも知れません。ですが、「修繕」というキーワードで、自社の商品・サービスを点検しても、今回のような発想が得られます。
この修理サービスは、ビー・スタイルが制作した映像のみが対象となるのだそうです。「映像の完成バージョンと字幕や音声を除いた2つのバージョンのテープのみを保存」することで、字幕や音声の差し替えが可能になるのです。
興味深いのは、「データの保存料が初年度は無料で2年目からは年間10万円かかる」というビジネスモデルです。修正の最低料金が1万円とは、随分と安いと思ったのですが、なるほど、このような仕掛けがあったのですね。
これもまた、どこかで聞いたような話です。ソフトウェアなどを売り切りにせず、長期的かつ継続的に使用料を徴収するモデル。ソフトウェア業界という他業界のビジネスモデルを、自社に採り入れたと言えるでしょう。
日経記事を読まずとも、他社・他業界のやり方をマネし、自社に採り入れることは可能だと思います。ですが、情報が集約されている新聞を、発想のヒント獲得に活用するのは効率的です。試してみてはいかがでしょうか。
【今日の教訓】
あなたの企業では、日経記事をどのように経営や仕事に役立てているだろうか。他社・他業界のことと受け止めてしまえば、共通点も接点も見出せず、役に立てることはできない。記事を抽象化し、自社に役立つ共通点を探してみよう。そうすれば、きっと役立てることができるはずだ。
<参考:日本経済新聞 2009.05.27【15面】>
※お知らせ
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東京・大阪・名古屋・広島・福岡で連続開催!
※詳細&お申込み
→ http://www.entrelect.co.jp/seminar_keieisenryakuko0906.html
このセミナーでは、私の新聞記事の読み方をご紹介すると共に、そこから新たなビジネス発想を生むための具体的な手法や事例を惜しみなくお伝えします。
新聞記事という、ごく身近な情報に、これほどまでの価値があったことに驚いていただけることでしょう。発想やアイデアが浮かばないという悩みはもう、おさらばです。
もしあなたが、下記のいずれかに該当するのなら、ぜひご参加をお勧めします。
・成長発展志向の経営者、事業責任者
・発想力を飛躍的に高めたいビジネスパースン
・起業や新規事業のネタをお探し中の方
・現役のコンサルタント並びに志望者
・その他、向上心の高いすべてのビジネスパーソン
なお、ご参加にあたっては、当日の日本経済新聞(朝刊)を持参ください。セミナー内で、いくつかの記事を材料に発想のワークを行ないます。
会場でお会いできることを、楽しみにしております。
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参加お申し込みのメールのコメント欄に、日経記事は毎日チェックしているが、仕事に役立てるノウハウがわからない、といった書き込みが散見されます。
そのノウハウ、セミナーでは、きっちりとお話ししたいと思っています。ノウハウの一つとして、記事を「抽象化する」という手順を踏むことがあります。
要は、自分の仕事で応用可能なエッセンスを抽出するということです。食事を摂取した場合で言えば、いったん消化して栄養素のレベルに分解してから、肉体に再構成するというイメージになるでしょうか。
たとえば、建設業界などでは、リフォーム市場がおおいに注目されてきています。建設業界の話として受け止めると、業界が違えば、特に役立つ記事ではないかも知れません。
ですが、「新品」ではなく「修繕」の市場が注目されている、と抽象化すれば、他のほとんどの業界で通用する話になります。5月27日付けの日本経済新聞にも、そのような記事が掲載されています。
「人材派遣や採用支援を手がけるビー・スタイルは採用活動用に作った映像の修理サービスを始める」のだそうです。建設業界とは全く異なる業界ですが、「修繕」の市場に注目するという点では、同じです。
記事によれば、「事業部名の変更や登場人物の異動などで修正が必要な場合に1万円から対応する」そうです。ほんの一部分の修正のために、すべて録り直すというのは、さすがにムダですね。
昨今の景気を考え、「採用コストが限られる中、いったん、「新品」ではなく「修繕」の市場が注目されている、と抽象化すれば、他のほとんどの業界で通用する話になります。5月27日付けの日本経済新聞にも、そのような記事が掲載されています。
「人材派遣や採用支援を手がけるビー・スタイルは採用活動用に作った映像の修理サービスを始める」のだそうです。建設業界とは全く異なる業界ですが、「修繕」の市場に注目するという点では、同じです。
記事によれば、「事業部名の変更や登場人物の異動などで修正が必要な場合に1万円から対応する」そうです。ほんの一部分の修正のために、すべて録り直すというのは、さすがにムダですね。
昨今の景気を考え、「採用コストが限られる中、いったん制作した映像を数年間使用したい企業が多いと判断した」とのことです。洋服などでもそうですが、「修繕」や「リサイクル」「リユース」は、今や社会全体のキーワードですし、自社・自業界でも例外ではないはずです。
このように、日経記事を読む際は、「同じ」こと、すなわち自社や自業界との共通点を探し、着目することで、経営や仕事に役立てやすくなります。
ビー・スタイルがこのサービスを発想したのは、純粋に「もったいない」という顧客の声に耳を傾けた結果だったのかも知れません。ですが、「修繕」というキーワードで、自社の商品・サービスを点検しても、今回のような発想が得られます。
この修理サービスは、ビー・スタイルが制作した映像のみが対象となるのだそうです。「映像の完成バージョンと字幕や音声を除いた2つのバージョンのテープのみを保存」することで、字幕や音声の差し替えが可能になるのです。
興味深いのは、「データの保存料が初年度は無料で2年目からは年間10万円かかる」というビジネスモデルです。修正の最低料金が1万円とは、随分と安いと思ったのですが、なるほど、このような仕掛けがあったのですね。
これもまた、どこかで聞いたような話です。ソフトウェアなどを売り切りにせず、長期的かつ継続的に使用料を徴収するモデル。ソフトウェア業界という他業界のビジネスモデルを、自社に採り入れたと言えるでしょう。
日経記事を読まずとも、他社・他業界のやり方をマネし、自社に採り入れることは可能だと思います。ですが、情報が集約されている新聞を、発想のヒント獲得に活用するのは効率的です。試してみてはいかがでしょうか。
【今日の教訓】
あなたの企業では、日経記事をどのように経営や仕事に役立てているだろうか。他社・他業界のことと受け止めてしまえば、共通点も接点も見出せず、役に立てることはできない。記事を抽象化し、自社に役立つ共通点を探してみよう。そうすれば、きっと役立てることができるはずだ。
<参考:日本経済新聞 2009.05.27【15面】>
※お知らせ
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東京・大阪・名古屋・広島・福岡で連続開催!
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このセミナーでは、私の新聞記事の読み方をご紹介すると共に、そこから新たなビジネス発想を生むための具体的な手法や事例を惜しみなくお伝えします。
新聞記事という、ごく身近な情報に、これほどまでの価値があったことに驚いていただけることでしょう。発想やアイデアが浮かばないという悩みはもう、おさらばです。
もしあなたが、下記のいずれかに該当するのなら、ぜひご参加をお勧めします。
・成長発展志向の経営者、事業責任者
・発想力を飛躍的に高めたいビジネスパースン
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・その他、向上心の高いすべてのビジネスパーソン
なお、ご参加にあたっては、当日の日本経済新聞(朝刊)を持参ください。セミナー内で、いくつかの記事を材料に発想のワークを行ないます。
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2009年05月26日
コーヒーはスタバよりマック?
東京と大阪の間を毎月往復していると、東京と大阪の違いが見えてきます。たとえばエスカレーターの右側に人が連なっているのを見ると、いかにも大阪的な風景だと感じます。
ランチの値段についても、東京と比べると大阪は2割くらい安いように思います。東京が850円なら、大阪は700円、といった具合でしょうか。東京なら、食後にコーヒーでも飲めば、ランチ代は1000円を超えることになります。
みみっちい話で恐縮ですが、ランチで1000円超となると、ちょっとぜいたくな感じがしますね。そう考えると、コーヒーは我慢しようか、という発想が浮かぶ気持ちは理解できます。
5月26日付けの日本経済新聞に、「スターバックス、ドトールといったコーヒー店の利用を控える動きが広がっている」とする記事が掲載されています。
ランチ予算が1000円を超えないように、という発想に基づくのかどうかはわかりませんが、やはり不況の影響がこんなところにも現われているわけです。
記事によれば、スタバやドトールの利用回数が減った代わりに、「マクドナルドなどのファストフード店」の利用が増えているそうです。コーヒーは120円だから、ランチ予算1000円以内に収まるということでしょうか。
決して「安かろう悪かろう」ではありません。記事によれば、「価格の安さに加え、味についてもコーヒー店より良い、または同じと評価する人が半分を超えた」のだそうです。
マック(大阪ならマクド)のコーヒーの方がスタバより美味しいという話は、しばらく前から聞きますが、ちょっとしたショッキングな事実と受け止められたのではないでしょうか。
要するに、安くておいしいものを提供すれば人気を集めるという、ごく当然な話なのですが、その「事実」に気づくまでに、多少なりとも時間がかかります。それがブランドイメージというものでしょう。
ハリウッド映画では、役者の話す「Starbucks」という単語が、字幕で「高級店」と訳されているのを見て、なるほどと思ったことがあります。ですが今や、高級専門店のコーヒーが、ファストフード店のコーヒーと競合し、負けるご時世なんですね。
記事には、「マックは食事をする店と思っていた」という主婦が、「スタバの半額以下でコーヒーを飲めると知って見直した」とのコメントが紹介されています。「事実」に気づき、目覚めてしまったようです。
このような「事実」への気づきは、「思い込み」から解放されることにより生まれます。これは、買い手だけでなく、売り手にも言えることでしょう。
ハンバーガー屋のコーヒーなんて、たいしたことない、と買い手は思い込んでいるかも知れません。一方、売り手も、うちはハンバーガー屋なのだから、コーヒーの味はどうでもよい、と思っていたりします。そうであれば、スタバの地位は安泰だったでしょう。
ですがマクドナルドが「本気」を出してコーヒーの味を改善すれば、今回のような逆転現象も起こるわけです。このような状況を受け、スタバは、従業員の再教育を行なったという報道は、記憶に新しいところです。
競争の対象にもならないとさえ見ていた相手が、いつのまにか実力をつけ、地位を脅かしてくるという現象は、コーヒーの世界だけの話ではありませんね。自社の商品・サービスを振り返り、同じことが起きつつあるのではないか、常に点検することが必要でしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品・サービスは、常に競合にさらされていることを自覚しよう。はるかに格下で、競争の対象にならない相手だと思っていても、あなたの企業の地位を脅かすべく、虎視眈眈と狙っているかも知れない。油断は禁物だ。
<参考:日本経済新聞 2009.05.26【31面】>
ランチの値段についても、東京と比べると大阪は2割くらい安いように思います。東京が850円なら、大阪は700円、といった具合でしょうか。東京なら、食後にコーヒーでも飲めば、ランチ代は1000円を超えることになります。
みみっちい話で恐縮ですが、ランチで1000円超となると、ちょっとぜいたくな感じがしますね。そう考えると、コーヒーは我慢しようか、という発想が浮かぶ気持ちは理解できます。
5月26日付けの日本経済新聞に、「スターバックス、ドトールといったコーヒー店の利用を控える動きが広がっている」とする記事が掲載されています。
ランチ予算が1000円を超えないように、という発想に基づくのかどうかはわかりませんが、やはり不況の影響がこんなところにも現われているわけです。
記事によれば、スタバやドトールの利用回数が減った代わりに、「マクドナルドなどのファストフード店」の利用が増えているそうです。コーヒーは120円だから、ランチ予算1000円以内に収まるということでしょうか。
決して「安かろう悪かろう」ではありません。記事によれば、「価格の安さに加え、味についてもコーヒー店より良い、または同じと評価する人が半分を超えた」のだそうです。
マック(大阪ならマクド)のコーヒーの方がスタバより美味しいという話は、しばらく前から聞きますが、ちょっとしたショッキングな事実と受け止められたのではないでしょうか。
要するに、安くておいしいものを提供すれば人気を集めるという、ごく当然な話なのですが、その「事実」に気づくまでに、多少なりとも時間がかかります。それがブランドイメージというものでしょう。
ハリウッド映画では、役者の話す「Starbucks」という単語が、字幕で「高級店」と訳されているのを見て、なるほどと思ったことがあります。ですが今や、高級専門店のコーヒーが、ファストフード店のコーヒーと競合し、負けるご時世なんですね。
記事には、「マックは食事をする店と思っていた」という主婦が、「スタバの半額以下でコーヒーを飲めると知って見直した」とのコメントが紹介されています。「事実」に気づき、目覚めてしまったようです。
このような「事実」への気づきは、「思い込み」から解放されることにより生まれます。これは、買い手だけでなく、売り手にも言えることでしょう。
ハンバーガー屋のコーヒーなんて、たいしたことない、と買い手は思い込んでいるかも知れません。一方、売り手も、うちはハンバーガー屋なのだから、コーヒーの味はどうでもよい、と思っていたりします。そうであれば、スタバの地位は安泰だったでしょう。
ですがマクドナルドが「本気」を出してコーヒーの味を改善すれば、今回のような逆転現象も起こるわけです。このような状況を受け、スタバは、従業員の再教育を行なったという報道は、記憶に新しいところです。
競争の対象にもならないとさえ見ていた相手が、いつのまにか実力をつけ、地位を脅かしてくるという現象は、コーヒーの世界だけの話ではありませんね。自社の商品・サービスを振り返り、同じことが起きつつあるのではないか、常に点検することが必要でしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品・サービスは、常に競合にさらされていることを自覚しよう。はるかに格下で、競争の対象にならない相手だと思っていても、あなたの企業の地位を脅かすべく、虎視眈眈と狙っているかも知れない。油断は禁物だ。
<参考:日本経済新聞 2009.05.26【31面】>
2009年05月26日
セールスマンではなく、専門家を目指そう!
企業が新規事業のネタを考える際は、まずは自社の事業ドメインを定義することから始めるとよいでしょう。事業ドメインは、自社の競争の土俵であり、多くの場合、それが自社の強みを発揮できる領域となります。
個人が起業ネタを考える際も、自分の「ドメイン」は何かを考えるとよいですね。もっとわかりやすい表現で言えば、自分の「専門分野」です。週末起業フォーラムなどで起業ネタ発想の指導をする際は、まずは自分の専門分野を決めることをお奨めしています。
専門分野を決めるということは、その分野における専門家として自分をブランディングしていくことにつながります。「専門家」の地位を固めるメリットは、計り知れません。
それは、顧客の立場で考えれば明白でしょう。何か商品を購入するなら、専門家から買いたいからです。店主や店員が、自分たちの扱う商品に関する知識について素人レベルだとしたら、とても買い物する気にはなれませんね。
ですので、自社の「専門性」をアピールすることは、確実にアドバンテージになります。5月25日付けの日経MJ(流通新聞)に、パソコン専門店チェーンの「PCデポ」に関する記事が掲載されています。
記事によれば、「PCデポ」では「5月から店頭に電子看板を設置、最新のウイルス情報やリコール情報の来店客への発信を始めた」そうです。
「パソコンなどを脅かすウイルスは生活への脅威で、消費者は対策情報を求めている」のを受けての施策ですが、「専門家がいる店としての認知を広めることも狙う」とのことです。
具体的には、横行しているパソコンウイルスの種類や製品の安全・リコール情報のほか、店内の案内なども電子看板で配信しています。「製品の宣伝販促だけでなく、様々なトラブル情報も積極的に発信」することで、「顧客の信頼を得られる」と考えているのだそうです。
記事によれば、「従来の家電販売店では、こうした安全問題にはポスター掲示などで注意を喚起するか、問い合わせがあれば答えるなど受身の対応が多かった」とのことです。
個人が専門家として認められるには、積極的に情報を発信することが不可欠です。店舗であっても、それは同じことでしょう。その際、売るための情報だけでは、専門家ではなく、単なるセールスマンとなってしまいます。
自店の立ち位置を、「専門家」と「セールスマン」のどちらと考えるべきかと言えば、やはり前者が望ましいと言えます。顧客は「専門家」の言葉には耳を傾けますが、「セールスマン」のそれについては、眉に唾をしがちだからです。
この施策の効果で、「PCデポ」は「デジタル機器のトラブル時の駆け込み寺として認知度を向上しつつある」そうです。店舗としてのブランディングに成功しているわけですね。
取り扱う商品について、専門家としての情報を豊富に提供してくれる店は、確かに魅力的です。最近、電子看板への注目が高まっていますが、店舗の情報発信ツールとしての効能を考えると、それもうなづけます。
いずれにしろ、「セールスマン」ではなく、「専門家」という視点で、自社の発信する情報の質・量についての見直しをしてみることは、有益なはずですね。
【今日の教訓】
あなたの企業では、市場・顧客に対して、どのような情報を発信しているだろうか。「セールスマン」ではなく、「専門家」としての情報発信を重視しよう。信頼を獲得し、ブランディングを図るには、それが不可欠なはずだ。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.05.25【11面】>
個人が起業ネタを考える際も、自分の「ドメイン」は何かを考えるとよいですね。もっとわかりやすい表現で言えば、自分の「専門分野」です。週末起業フォーラムなどで起業ネタ発想の指導をする際は、まずは自分の専門分野を決めることをお奨めしています。
専門分野を決めるということは、その分野における専門家として自分をブランディングしていくことにつながります。「専門家」の地位を固めるメリットは、計り知れません。
それは、顧客の立場で考えれば明白でしょう。何か商品を購入するなら、専門家から買いたいからです。店主や店員が、自分たちの扱う商品に関する知識について素人レベルだとしたら、とても買い物する気にはなれませんね。
ですので、自社の「専門性」をアピールすることは、確実にアドバンテージになります。5月25日付けの日経MJ(流通新聞)に、パソコン専門店チェーンの「PCデポ」に関する記事が掲載されています。
記事によれば、「PCデポ」では「5月から店頭に電子看板を設置、最新のウイルス情報やリコール情報の来店客への発信を始めた」そうです。
「パソコンなどを脅かすウイルスは生活への脅威で、消費者は対策情報を求めている」のを受けての施策ですが、「専門家がいる店としての認知を広めることも狙う」とのことです。
具体的には、横行しているパソコンウイルスの種類や製品の安全・リコール情報のほか、店内の案内なども電子看板で配信しています。「製品の宣伝販促だけでなく、様々なトラブル情報も積極的に発信」することで、「顧客の信頼を得られる」と考えているのだそうです。
記事によれば、「従来の家電販売店では、こうした安全問題にはポスター掲示などで注意を喚起するか、問い合わせがあれば答えるなど受身の対応が多かった」とのことです。
個人が専門家として認められるには、積極的に情報を発信することが不可欠です。店舗であっても、それは同じことでしょう。その際、売るための情報だけでは、専門家ではなく、単なるセールスマンとなってしまいます。
自店の立ち位置を、「専門家」と「セールスマン」のどちらと考えるべきかと言えば、やはり前者が望ましいと言えます。顧客は「専門家」の言葉には耳を傾けますが、「セールスマン」のそれについては、眉に唾をしがちだからです。
この施策の効果で、「PCデポ」は「デジタル機器のトラブル時の駆け込み寺として認知度を向上しつつある」そうです。店舗としてのブランディングに成功しているわけですね。
取り扱う商品について、専門家としての情報を豊富に提供してくれる店は、確かに魅力的です。最近、電子看板への注目が高まっていますが、店舗の情報発信ツールとしての効能を考えると、それもうなづけます。
いずれにしろ、「セールスマン」ではなく、「専門家」という視点で、自社の発信する情報の質・量についての見直しをしてみることは、有益なはずですね。
【今日の教訓】
あなたの企業では、市場・顧客に対して、どのような情報を発信しているだろうか。「セールスマン」ではなく、「専門家」としての情報発信を重視しよう。信頼を獲得し、ブランディングを図るには、それが不可欠なはずだ。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.05.25【11面】>
2009年05月22日
日経記事は、こうやって仕事の役に立てる!
6月に全国5ヶ所で開催するセミナーの告知を開始したところ、おかげさまで、かなりの勢いで参加お申し込みをいただいています。新聞記事でビジネス発想力を鍛えるというコンセプトが支持されたものと理解し、非常にありがたく思っています。
日経記事を読んでいると、さまざまな企業のナマの経営活動が伝えられるので、「そうか、こういう手もあったか」と、新たな発想のヒントを得るのに事欠きません。
たとえば、何らかの事情で資金に余裕ができたら、どのように活用すればよいでしょうか。5月21日付けの日経産業新聞に、「ライオンは2009年12月期の広告宣伝費を前の期に比べて15%増やし、230億円程度にする」という記事が掲載されています。
この原資は、「原材料の調達価格の下落」によりもたらされた余裕資金です。ライオンの場合、これを「積極的な広告宣伝でブランドイメージを高めて、売上拡大につなげる」ことを考えています。
なるほど。余裕資金は、広告宣伝・販売促進に使うという手があるか、と思いださせてくれます。もちろん、そんなことは記事を読まなくてもすぐに思いつくという人もいるでしょう。ですが、たまたま失念していた場合は、この記事がリマインダの役目を果たしてくれます。
では、余裕資金は、必ず広告宣伝費に使うべきなのでしょうか。記事に書いてあるからといって、それが正解だとは限りません。たまたまライオンがそうする、と書いてあるだけです。まだ成果が検証されているわけではありません。
そこで記事を読み進めていくと、ライオンの置かれている状況がわかります。「同社の2008年12月期の広告宣伝費は前の期比9.6%減の198億円だった」そうです。原材料高が理由で、「広告手法を見直した」とのことです。
「広告費を削減した」ではなく、「広告手法を見直した」と書かれていることに、注目する必要があるでしょう。この記事では、どのように見直したかについて、明確には触れられていません。
ですが記事を最後まで読むと、プライベートブランド(PB)が台頭していることが指摘されています。「メーカーが販売促進費を投じて利益を削って値下げしても、価格ではPBには勝てない。ライオンではPBと価格競争するよりも広告宣伝でブランドイメージを高めた方が得策とみている」とのことです。
価格で勝てない場合の広告宣伝は、ブランドイメージを高めるような手法を用いるということですね。なるほど。これもまた、自社に応用が利く貴重なヒントです。ライオンの広告手法の見直しは、そのことを指していたのだろうと推測できます。
記事は、積み増した広告宣伝費を「ブランドの強化に充てる」と述べています。ライオンに限らず、ブランドの強化は、多くの企業にとって、重要な経営課題のはずです。自社のブランド強化のために、何かヒントは得られないだろうか。そんな思いで記事を読んでいきましょう。
記事によれば、「ライオンは売上高が100億円以上のメガブランドを11個にする方針を打ち出している」とのことです。なるほど。「ブランド強化」をお題目に挙げることにとどめず、明確な目標を設定しているわけです。
ライオンの場合、この基準を満たすメガブランドは、現在8個にとどまっているのだそうです。あと3個、増やしたい。そのために、広告宣伝費を積み増す。明確な意図・目標をもって広告宣伝費を使うとは、このようなことですね。自社はどうなのか、見直しした方が、よいかも知れません。
あまり長くない記事ですが、3つの「なるほど」がありました。ここには書きませんでしたが、実はこの記事から、他にもいろいろな発想が浮かんでいます。この一つの記事を端緒に、ちょっとした論文を書くことも可能だと思います。
こんな風に日経記事を読めば、ビジネスにはもちろんのこと、自身の能力開発にも、かなり役立つのではないでしょうか。少なくとも私は、かなりの恩恵を被っていると思います。セミナーでは、そのノウハウを分かち合うことができれば嬉しいです。
※効果絶大!新聞記事で鍛える【超】ビジネス発想力強化セミナー
→ http://www.entrelect.co.jp/seminar_keieisenryakuko0906.html
【今日の教訓】
あなたが新聞に目を通す際、どれだけ「なるほど」を発見しているだろうか。その「なるほど」を受け、どれだけ自社の経営や仕事に置き換えて考えているだろうか。日経記事を活用するなら、ぜひ持っておきたい視点だ。
<参考:日経産業新聞 2009.05.21【16面】>
日経記事を読んでいると、さまざまな企業のナマの経営活動が伝えられるので、「そうか、こういう手もあったか」と、新たな発想のヒントを得るのに事欠きません。
たとえば、何らかの事情で資金に余裕ができたら、どのように活用すればよいでしょうか。5月21日付けの日経産業新聞に、「ライオンは2009年12月期の広告宣伝費を前の期に比べて15%増やし、230億円程度にする」という記事が掲載されています。
この原資は、「原材料の調達価格の下落」によりもたらされた余裕資金です。ライオンの場合、これを「積極的な広告宣伝でブランドイメージを高めて、売上拡大につなげる」ことを考えています。
なるほど。余裕資金は、広告宣伝・販売促進に使うという手があるか、と思いださせてくれます。もちろん、そんなことは記事を読まなくてもすぐに思いつくという人もいるでしょう。ですが、たまたま失念していた場合は、この記事がリマインダの役目を果たしてくれます。
では、余裕資金は、必ず広告宣伝費に使うべきなのでしょうか。記事に書いてあるからといって、それが正解だとは限りません。たまたまライオンがそうする、と書いてあるだけです。まだ成果が検証されているわけではありません。
そこで記事を読み進めていくと、ライオンの置かれている状況がわかります。「同社の2008年12月期の広告宣伝費は前の期比9.6%減の198億円だった」そうです。原材料高が理由で、「広告手法を見直した」とのことです。
「広告費を削減した」ではなく、「広告手法を見直した」と書かれていることに、注目する必要があるでしょう。この記事では、どのように見直したかについて、明確には触れられていません。
ですが記事を最後まで読むと、プライベートブランド(PB)が台頭していることが指摘されています。「メーカーが販売促進費を投じて利益を削って値下げしても、価格ではPBには勝てない。ライオンではPBと価格競争するよりも広告宣伝でブランドイメージを高めた方が得策とみている」とのことです。
価格で勝てない場合の広告宣伝は、ブランドイメージを高めるような手法を用いるということですね。なるほど。これもまた、自社に応用が利く貴重なヒントです。ライオンの広告手法の見直しは、そのことを指していたのだろうと推測できます。
記事は、積み増した広告宣伝費を「ブランドの強化に充てる」と述べています。ライオンに限らず、ブランドの強化は、多くの企業にとって、重要な経営課題のはずです。自社のブランド強化のために、何かヒントは得られないだろうか。そんな思いで記事を読んでいきましょう。
記事によれば、「ライオンは売上高が100億円以上のメガブランドを11個にする方針を打ち出している」とのことです。なるほど。「ブランド強化」をお題目に挙げることにとどめず、明確な目標を設定しているわけです。
ライオンの場合、この基準を満たすメガブランドは、現在8個にとどまっているのだそうです。あと3個、増やしたい。そのために、広告宣伝費を積み増す。明確な意図・目標をもって広告宣伝費を使うとは、このようなことですね。自社はどうなのか、見直しした方が、よいかも知れません。
あまり長くない記事ですが、3つの「なるほど」がありました。ここには書きませんでしたが、実はこの記事から、他にもいろいろな発想が浮かんでいます。この一つの記事を端緒に、ちょっとした論文を書くことも可能だと思います。
こんな風に日経記事を読めば、ビジネスにはもちろんのこと、自身の能力開発にも、かなり役立つのではないでしょうか。少なくとも私は、かなりの恩恵を被っていると思います。セミナーでは、そのノウハウを分かち合うことができれば嬉しいです。
※効果絶大!新聞記事で鍛える【超】ビジネス発想力強化セミナー
→ http://www.entrelect.co.jp/seminar_keieisenryakuko0906.html
【今日の教訓】
あなたが新聞に目を通す際、どれだけ「なるほど」を発見しているだろうか。その「なるほど」を受け、どれだけ自社の経営や仕事に置き換えて考えているだろうか。日経記事を活用するなら、ぜひ持っておきたい視点だ。
<参考:日経産業新聞 2009.05.21【16面】>
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2009年05月20日
使いやすさにこだわったノートに人気
起業支援の活動を始めて、もう満8年くらいになります。中小企業をターゲットとしたコンサルタントとして、新規事業開発の支援に携わった経験が生きています。ですが、それ以前の経験も、確実に現在の活動のバックグラウンドになっています。
私は、サラリーマンと専業主婦という、ごくありふれた家庭で生まれ、育ちました。ところが高校生の頃、自分の店を持ちたいと言いだして、母親が居酒屋を開業しました。
それからしばらくして、居酒屋が軌道に乗ったことから、今度は父親が会社を辞めて自分の店を持ちたいと言い始めました。当時の言葉で言えば、「脱サラ」です。そして文房具店を開店したのです。
実家が商家である人は多いでしょうが、両親がそれぞれ、別のビジネスで創業したという経験を持つ人は、あまり多くないと思います。ちょっと珍しいとも言えるこの生い立ちが、起業支援に熱を入れることができる基盤となっているのでしょう。
もし家業を継ぐとしたら、居酒屋と文房具屋のどちらを選ぶかと言えば、迷うことなく文房具屋だと思っていました。残念なことに、数年後、父は店へ通う途中で交通事故に遭い、命を落としてしまったため、文房具屋を継ぐことにはならなかったのですが。
いずれにしろ、子供の頃から文房具に対する愛着は強いです。恐らく父親譲りなのでしょう。百貨店・量販店・コンビニを問わず、今でも文具売り場に足を踏み入れると、胸がときめく思いがします。
5月20日付けの日本経済新聞に、「使いやすさにこだわったノートが人気だ」という記事をみつけました。「書き込む内容をきれいに整理できるよう、字をそろえるための点を打ったり、ページを分割したりしているのが特徴」なのだそうです。
いろいろな新商品やアイデア商品が次々とリリースされるのが、文房具の魅力です。とは言え、開発担当者には叱られてしまうかも知れませんが、「ノート」というありふれた商品に、まだ開発工夫の余地があったとは、素直に驚いてしまいました。
たとえばコクヨのキャンパスノートでは、「ページ内の横線にドット(点)を入れ」、「書きだしの位置をそろえたり、図や表を書いたりしやすい」工夫がなされています。
学研ステイフルの「コーネルメソッドノート」は、ページを3分割して、キーワードを書きだしたり、要点をまとめたりするのに便利なレイアウトになっています。
マルマンの「二ーモシネ」というノートもよく売れています。「ページの上辺にミシン目を入れて切り取れるようにし、会議の配布資料などとメモをまとめて管理」できるのだそうです。
進歩に限界はないということでしょうか。それとも、今まで進歩させるのを怠ってきた結果なのでしょうか。今さら紙のノートではないと考え、電子ツールに注目し過ぎていたということなのでしょうか。
仮にそうだとすると、いわゆる「先進的」なツールの登場により、印象が薄くなっている存在に、もっと目を向ける必要があるのではないか、という気がしてきます。
ノートの場合、印象が薄くなっているとしても、存在そのものは確固たる地位を保っています。意外な盲点だったかも知れません。自社の商品ラインナップの中に、そのような商品をみつけ出し、改善を加えることを考えてもよいのではないでしょうか。
【今日の教訓】
あなたの企業では、先進的な商品にばかり気をとられ、ありふれていながらも収益の柱となっている商品の改善・改良を怠ってはいないだろうか。開発工夫の余地を見出せば、さらなる収益拡大の可能性は大きいかも知れない。
<参考:日本経済新聞 2009.05.20【27面】>
私は、サラリーマンと専業主婦という、ごくありふれた家庭で生まれ、育ちました。ところが高校生の頃、自分の店を持ちたいと言いだして、母親が居酒屋を開業しました。
それからしばらくして、居酒屋が軌道に乗ったことから、今度は父親が会社を辞めて自分の店を持ちたいと言い始めました。当時の言葉で言えば、「脱サラ」です。そして文房具店を開店したのです。
実家が商家である人は多いでしょうが、両親がそれぞれ、別のビジネスで創業したという経験を持つ人は、あまり多くないと思います。ちょっと珍しいとも言えるこの生い立ちが、起業支援に熱を入れることができる基盤となっているのでしょう。
もし家業を継ぐとしたら、居酒屋と文房具屋のどちらを選ぶかと言えば、迷うことなく文房具屋だと思っていました。残念なことに、数年後、父は店へ通う途中で交通事故に遭い、命を落としてしまったため、文房具屋を継ぐことにはならなかったのですが。
いずれにしろ、子供の頃から文房具に対する愛着は強いです。恐らく父親譲りなのでしょう。百貨店・量販店・コンビニを問わず、今でも文具売り場に足を踏み入れると、胸がときめく思いがします。
5月20日付けの日本経済新聞に、「使いやすさにこだわったノートが人気だ」という記事をみつけました。「書き込む内容をきれいに整理できるよう、字をそろえるための点を打ったり、ページを分割したりしているのが特徴」なのだそうです。
いろいろな新商品やアイデア商品が次々とリリースされるのが、文房具の魅力です。とは言え、開発担当者には叱られてしまうかも知れませんが、「ノート」というありふれた商品に、まだ開発工夫の余地があったとは、素直に驚いてしまいました。
たとえばコクヨのキャンパスノートでは、「ページ内の横線にドット(点)を入れ」、「書きだしの位置をそろえたり、図や表を書いたりしやすい」工夫がなされています。
学研ステイフルの「コーネルメソッドノート」は、ページを3分割して、キーワードを書きだしたり、要点をまとめたりするのに便利なレイアウトになっています。
マルマンの「二ーモシネ」というノートもよく売れています。「ページの上辺にミシン目を入れて切り取れるようにし、会議の配布資料などとメモをまとめて管理」できるのだそうです。
進歩に限界はないということでしょうか。それとも、今まで進歩させるのを怠ってきた結果なのでしょうか。今さら紙のノートではないと考え、電子ツールに注目し過ぎていたということなのでしょうか。
仮にそうだとすると、いわゆる「先進的」なツールの登場により、印象が薄くなっている存在に、もっと目を向ける必要があるのではないか、という気がしてきます。
ノートの場合、印象が薄くなっているとしても、存在そのものは確固たる地位を保っています。意外な盲点だったかも知れません。自社の商品ラインナップの中に、そのような商品をみつけ出し、改善を加えることを考えてもよいのではないでしょうか。
【今日の教訓】
あなたの企業では、先進的な商品にばかり気をとられ、ありふれていながらも収益の柱となっている商品の改善・改良を怠ってはいないだろうか。開発工夫の余地を見出せば、さらなる収益拡大の可能性は大きいかも知れない。
<参考:日本経済新聞 2009.05.20【27面】>
2009年05月18日
ルミネが10期連続で増収増益-強み・弱みの「編集の妙」
「強み」に集中することが、競争における鉄則だと言われます。ですが、あまり「強み」にとらわれていると、環境の変化により、それが「弱み」となってしまうケースもあります。
そのため、新たな「強み」をつくるべく、既存の「強み」を磨くことを疎かにしてしまうことで、どちらも中途半端になってしまうケースもあります(トホホ)。経営とは、なかなか一筋縄ではいかないものです。
ポイントは、「強み」が本物かどうかですね。「強み」にとらわれ過ぎて失敗するケースがあるとすれば、実はそれは本物の「強み」ではないということになるでしょう。
先述のとおり、何が「強み」となり得るかは、環境変化に大きく影響されます。つまり、時代の要請に合致した「強み」を築けていないと、やはり競争には勝てないということです。
5月18日付けの日経MJ(流通新聞)に、「百貨店やスーパーの苦戦を尻目に、ルミネは2009年3月期も増収増益を確保した」という記事が掲載されています。
ルミネと言えば、新宿駅の駅ビル。小売業であれば、極めて有利な立地のはずです。ところが記事は、「10期連続の増収増益を達成したルミネを『立地に恵まれているから』と決めつけていたらそれは間違い」と断じています。
駅直結であることは「強み」のはずなのですが、ルミネの花崎淑夫社長によれば、「面積は狭く、思うように商業施設のインフラも整備できない」とのこと。この立地は、「強み」ではなく「弱み」だという認識のようです。
店舗の大型化が進む中、確かにルミネの新宿店(主力店)は狭いです。高島屋新宿店や伊勢丹新宿本店と比べれば、1/3の規模です。そして、「駅ビルの宿命として大規模改装も難しい」。
この「弱み」を認識した上でとった施策は、顧客対象を絞ることでした。「新宿駅の乗降客は老若男女だが、ルミネは若い男女を切り取った」と記事は解説しています。
「立地」「品揃え」「従業員の接客」のいずれも、小売業なら「強み」となり得ます。しかし競合環境を考えれば、どれも一様に重要だというわけではありません。この場合、「立地」だけを「強み」としていたのでは、とても生き残れないということだったのでしょう。
駅ビルを経営する鉄道会社の経営特性について、記事は次のように指摘しています。「顧客の絞り込みの必要のない鉄道会社。あるのは大人と子供料金の二つ。料金は決められた距離で設定される」。
多様な顧客ニーズに対応しなければならない小売業とは、まったく文化が異なりますね。そのためか、1991年に誕生して以来、ルミネは「1999年3月期まで減収が続」いたそうです。小売業に取り組むには、企業体質は「弱み」となっていたわけです。
しかし一方、鉄道会社は「安全と無事故、それに時間厳守」、「いろいろな職場が連携し大原則のために細心の注意を払う」、さらには方針を「一気通貫で現場まで行きわたらせる力」に優れています。このような企業体質は「強み」として生かせます。
今やルミネは「各テナントが一体化して相乗効果を発揮できる編集の妙」(花崎社長)が「強み」だと言えるほどになっています。「強み」と「弱み」を認識し、それを再編成したことで、全体としての競争力を確保した格好となります。
どの企業にも、「強み」と「弱み」はあるでしょう。競争の環境により、勝つために求められる「強み」も変わってきます。また現実には、「強み」にも「弱み」にもなり得る企業の特性というものもあります。
ルミネの売り場の「編集の妙」もさることながら、企業の特性を踏まえた「強み」「弱み」についての「編集の妙」にも、注目すべきでしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業の特性は、どのように自社の「強み」「弱み」に影響を与えているだろうか。真に求められる「強み」を磨き上げていくために、経営資源をどのように配分するのがベストか、考えてみよう。経営資源の「編集の妙」を発揮すべく、じっくり検討をしよう。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.05.18【1・3面】>
そのため、新たな「強み」をつくるべく、既存の「強み」を磨くことを疎かにしてしまうことで、どちらも中途半端になってしまうケースもあります(トホホ)。経営とは、なかなか一筋縄ではいかないものです。
ポイントは、「強み」が本物かどうかですね。「強み」にとらわれ過ぎて失敗するケースがあるとすれば、実はそれは本物の「強み」ではないということになるでしょう。
先述のとおり、何が「強み」となり得るかは、環境変化に大きく影響されます。つまり、時代の要請に合致した「強み」を築けていないと、やはり競争には勝てないということです。
5月18日付けの日経MJ(流通新聞)に、「百貨店やスーパーの苦戦を尻目に、ルミネは2009年3月期も増収増益を確保した」という記事が掲載されています。
ルミネと言えば、新宿駅の駅ビル。小売業であれば、極めて有利な立地のはずです。ところが記事は、「10期連続の増収増益を達成したルミネを『立地に恵まれているから』と決めつけていたらそれは間違い」と断じています。
駅直結であることは「強み」のはずなのですが、ルミネの花崎淑夫社長によれば、「面積は狭く、思うように商業施設のインフラも整備できない」とのこと。この立地は、「強み」ではなく「弱み」だという認識のようです。
店舗の大型化が進む中、確かにルミネの新宿店(主力店)は狭いです。高島屋新宿店や伊勢丹新宿本店と比べれば、1/3の規模です。そして、「駅ビルの宿命として大規模改装も難しい」。
この「弱み」を認識した上でとった施策は、顧客対象を絞ることでした。「新宿駅の乗降客は老若男女だが、ルミネは若い男女を切り取った」と記事は解説しています。
「立地」「品揃え」「従業員の接客」のいずれも、小売業なら「強み」となり得ます。しかし競合環境を考えれば、どれも一様に重要だというわけではありません。この場合、「立地」だけを「強み」としていたのでは、とても生き残れないということだったのでしょう。
駅ビルを経営する鉄道会社の経営特性について、記事は次のように指摘しています。「顧客の絞り込みの必要のない鉄道会社。あるのは大人と子供料金の二つ。料金は決められた距離で設定される」。
多様な顧客ニーズに対応しなければならない小売業とは、まったく文化が異なりますね。そのためか、1991年に誕生して以来、ルミネは「1999年3月期まで減収が続」いたそうです。小売業に取り組むには、企業体質は「弱み」となっていたわけです。
しかし一方、鉄道会社は「安全と無事故、それに時間厳守」、「いろいろな職場が連携し大原則のために細心の注意を払う」、さらには方針を「一気通貫で現場まで行きわたらせる力」に優れています。このような企業体質は「強み」として生かせます。
今やルミネは「各テナントが一体化して相乗効果を発揮できる編集の妙」(花崎社長)が「強み」だと言えるほどになっています。「強み」と「弱み」を認識し、それを再編成したことで、全体としての競争力を確保した格好となります。
どの企業にも、「強み」と「弱み」はあるでしょう。競争の環境により、勝つために求められる「強み」も変わってきます。また現実には、「強み」にも「弱み」にもなり得る企業の特性というものもあります。
ルミネの売り場の「編集の妙」もさることながら、企業の特性を踏まえた「強み」「弱み」についての「編集の妙」にも、注目すべきでしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業の特性は、どのように自社の「強み」「弱み」に影響を与えているだろうか。真に求められる「強み」を磨き上げていくために、経営資源をどのように配分するのがベストか、考えてみよう。経営資源の「編集の妙」を発揮すべく、じっくり検討をしよう。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.05.18【1・3面】>
2009年05月13日
婚活の強い味方?「男の子牧場」にみるビジネス成功の秘訣
ビジネスの展開において、人脈が重要だということは、さまざまな場面でひしひしと感じます。営業にしろ仕入れや提携の交渉にしろ、人脈がなければ、まずは先方と「会う」ことすら難しかったりするわけですから。
人脈は、ビジネスの土俵に上がるためのパスポートであり、参入障壁でもあると言えるでしょう。これを理解しておかないと、効率よくビジネスを展開することができにくくなります。
私のところへも、特定の属性を持つ人物や企業を紹介してくれ、という依頼が、しばしば舞い込ます。ネットで検索し、問い合わせメールでも何でも送れば済む、というわけにはいかない、という感覚なのでしょう。
実際、どこの馬の骨ともわからぬ人物からのアプローチは、私でも警戒します。しかし、たとえ相手を知らなくても、知人からの紹介であれば、警戒心のハードルは、かなり下がります。
5月13日付けの日経MJ(流通新聞)に、「サイバーエージェントは13日、携帯電話専用の女性向け男性情報サイト『男の子牧場』を開設する」という記事が掲載されています。
これは、「女性が身近にいる男性の名前や写真などのプロフィルを登録し、友人同士で情報を共有する仕組み」なのだそうです。背景としては、最近注目されている「婚活」があります。
興味深く感じたのは、「最近の若者は恋人や結婚相手を探す際に友人の紹介で出会いを求める傾向が強く、牧場が候補男性の紹介を円滑化できるとみている」という記事の記述です。
結婚相手をみつけるにも、ビジネスと同様、「人脈」の原則が適用されるというわけです。確かに、当たって砕けろの精神で、直接アプローチして「告白」するよりも、紹介があった方が、交際に結びつく確率は高そうです。
記事によれば、「男の子牧場」では、「女性は職場や学校などで交友がある男性の写真やニックネーム、紹介文などを入力。ウマ、ヒツジなどのマスコットを選び登録する」ことになります。それが「牧場」だというわけです。
そして、「女性から友人承認を受けた会員は牧場で気に入った男性の紹介画面を選び閲覧できる」。「日記やメール、伝言板などのコミュニティー機能もある」とのことで、「友人のみに限定して」紹介ができるとか。
人脈作りに活用するビジネス系SNSの、婚活版といったところでしょうか。いずれの場合も、「紹介」の威力は大きいです。口コミによるマーケティングも、「紹介」の作用をうまく使ったやり方です。
「紹介」の場合、紹介者は一定の責任を負い、「太鼓判」「お墨付き」を与えているという了解があります。また、紹介者という共通の知人がいることで、信頼関係も早期に築きやすいでしょう。ですので、ビジネスも恋愛も、話が早くなります。
つまり、直接のアプローチよりも、わざわざ迂回し、紹介者を介した方が、結局は効率的なのです。「急がば回れ」とは、まさにこのことでしょう。これは、「仕組み」というより「原則」ととらえるべきですね。
紹介で顧客が増えていくことは、マーケティングの理想の姿です。顧客のほとんどを紹介で獲得しているという企業も、現実に多数存在します。紹介を「偶然」ととらえていては、もったいないことです。それを誘発する仕組みづくりについて、真剣に考えてみる価値はあるはずです。
【今日の教訓】
あなたの企業では、紹介により獲得した顧客の比率はどれくらいだろうか。紹介は、売り手にも買い手にも求められている。紹介を誘発・促進する仕組みづくりを考えてみよう。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.05.13【19面】>
人脈は、ビジネスの土俵に上がるためのパスポートであり、参入障壁でもあると言えるでしょう。これを理解しておかないと、効率よくビジネスを展開することができにくくなります。
私のところへも、特定の属性を持つ人物や企業を紹介してくれ、という依頼が、しばしば舞い込ます。ネットで検索し、問い合わせメールでも何でも送れば済む、というわけにはいかない、という感覚なのでしょう。
実際、どこの馬の骨ともわからぬ人物からのアプローチは、私でも警戒します。しかし、たとえ相手を知らなくても、知人からの紹介であれば、警戒心のハードルは、かなり下がります。
5月13日付けの日経MJ(流通新聞)に、「サイバーエージェントは13日、携帯電話専用の女性向け男性情報サイト『男の子牧場』を開設する」という記事が掲載されています。
これは、「女性が身近にいる男性の名前や写真などのプロフィルを登録し、友人同士で情報を共有する仕組み」なのだそうです。背景としては、最近注目されている「婚活」があります。
興味深く感じたのは、「最近の若者は恋人や結婚相手を探す際に友人の紹介で出会いを求める傾向が強く、牧場が候補男性の紹介を円滑化できるとみている」という記事の記述です。
結婚相手をみつけるにも、ビジネスと同様、「人脈」の原則が適用されるというわけです。確かに、当たって砕けろの精神で、直接アプローチして「告白」するよりも、紹介があった方が、交際に結びつく確率は高そうです。
記事によれば、「男の子牧場」では、「女性は職場や学校などで交友がある男性の写真やニックネーム、紹介文などを入力。ウマ、ヒツジなどのマスコットを選び登録する」ことになります。それが「牧場」だというわけです。
そして、「女性から友人承認を受けた会員は牧場で気に入った男性の紹介画面を選び閲覧できる」。「日記やメール、伝言板などのコミュニティー機能もある」とのことで、「友人のみに限定して」紹介ができるとか。
人脈作りに活用するビジネス系SNSの、婚活版といったところでしょうか。いずれの場合も、「紹介」の威力は大きいです。口コミによるマーケティングも、「紹介」の作用をうまく使ったやり方です。
「紹介」の場合、紹介者は一定の責任を負い、「太鼓判」「お墨付き」を与えているという了解があります。また、紹介者という共通の知人がいることで、信頼関係も早期に築きやすいでしょう。ですので、ビジネスも恋愛も、話が早くなります。
つまり、直接のアプローチよりも、わざわざ迂回し、紹介者を介した方が、結局は効率的なのです。「急がば回れ」とは、まさにこのことでしょう。これは、「仕組み」というより「原則」ととらえるべきですね。
紹介で顧客が増えていくことは、マーケティングの理想の姿です。顧客のほとんどを紹介で獲得しているという企業も、現実に多数存在します。紹介を「偶然」ととらえていては、もったいないことです。それを誘発する仕組みづくりについて、真剣に考えてみる価値はあるはずです。
【今日の教訓】
あなたの企業では、紹介により獲得した顧客の比率はどれくらいだろうか。紹介は、売り手にも買い手にも求められている。紹介を誘発・促進する仕組みづくりを考えてみよう。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.05.13【19面】>
2009年05月12日
外国語会話教室の受講生数が半減!
「バブル経済」「バブル崩壊」といった言葉は、すっかり定着しています。バブルとは、すなわち「泡」のことです。泡のように、はかない存在がバブルだというわけです。
「バブル景気」となると、いつ萎むかわからない、いつ消滅しても不思議ではない、といったイメージが思い浮かびます。実需に基づかない、虚飾的な売上増加であり、基盤は脆弱です。
5月12日付けの日本経済新聞に、「2008年の外国語会話教室の年間延べ受講生数は、2007年に比べて39%少ない451万3621人だった」という記事が掲載されています。
40%近い市場規模減というだけでも驚かされますが、記事によれば、「最多だった2006年から2年で半減した」そうです。ごく単純に考えれば、減った半分は、実需に基づかない市場だったとみることができるのかも知れません。
受講生数減少の原因について、記事は「2007年10月に英会話学校最大手NOVAが経営破綻し、同社の生徒の多くが受講をあきらめたほか、受講料先払いの仕組みに対する不信感で他社への新規申し込みも減少した」と伝えています。
一企業の不始末が業界にもたらした影響の大きさに、今さらながら驚かされます。しかしこれも、いわゆる「バブル」が弾けただけだと考えれば、NOVAの破綻は単なるきっかけに過ぎなかったのかも知れません。
英会話が上手にできるようになりたい。日本人なら、ほとんど誰でもそう思っているでしょう。しかし本当に必要なのでしょうか。必要がないから、日本人は英会話が上手にならないのだ、という見方もあります。
必要がないものを売るというビジネス。その売上の拡大は、やはりバブルと呼ばれても仕方ありません。必要がないというのは、すなわち実需がないということです。
さらに記事を読むと、「TOEICの点数を上げるためのビジネスマン向け教室」は人気があるとのことです。「残業が減った時間で転職に向けてスキルアップ」しようということらしいです。こちらは実需と言えるでしょう。
一方、「シニア向けなど」のコースも増加しているそうです。ベルリッツ・ジャパンについては、「同社のシニアコースは4年前の開講時に比べ受講生数が20倍近くになった」とのことです。
これについては、JTBと組んで海外旅行と組み合わせたレッスンを提供しているなど、海外旅行ですぐに使うといった実需が支えているように思います。
外国語会話教室の受講生が激減したと言っても、決して一律ではありません。他の業界でも同様で、全体としての市場規模が減少しても、セグメントすれば、堅調な分野や伸びている分野はあるものです。そこを狙い撃ちしていけば、業績を確保できる可能性があります。
どこを狙うかを決めることが、まさに戦略策定のテーマです。その際の重要な着眼点の一つは、その市場が実需に支えられているのか、それともバブルなのかどうかです。
最近、農業が注目されているのは、人間は誰でも食事をしないでは生きられないからです。つまり食品には、確かな実需があるわけです。その点、英会話教室とは大きく異なります。
あえてバブルを狙うという戦略もあり得ます。日本人の英会話コンプレックスを巧みに突くことで、バブル需要をふくらませ、キャッシュにできるからです。しかし、長くは続かず、何かのきっかけで弾けてしまいます。
いずれにしろ、現在の業績は、実需に支えられているのか、それともバブルに乗っているだけなのか、これはしっかりと見極める必要があるでしょう。バブル崩壊の経験から、当然、学んでいなければならない教訓だったはずです。
【今日の教訓】
あなたの企業の業績は、確かな実需に支えられているものだろうか、それともバブルに乗っているだけだろうか。自社の現状分析をするのなら、まずは着目しなければならないポイントだ。その上で、将来へ向けてどのような戦略を構築するかを考えよう。
<参考:日本経済新聞 2009.05.12【29面】>
「バブル景気」となると、いつ萎むかわからない、いつ消滅しても不思議ではない、といったイメージが思い浮かびます。実需に基づかない、虚飾的な売上増加であり、基盤は脆弱です。
5月12日付けの日本経済新聞に、「2008年の外国語会話教室の年間延べ受講生数は、2007年に比べて39%少ない451万3621人だった」という記事が掲載されています。
40%近い市場規模減というだけでも驚かされますが、記事によれば、「最多だった2006年から2年で半減した」そうです。ごく単純に考えれば、減った半分は、実需に基づかない市場だったとみることができるのかも知れません。
受講生数減少の原因について、記事は「2007年10月に英会話学校最大手NOVAが経営破綻し、同社の生徒の多くが受講をあきらめたほか、受講料先払いの仕組みに対する不信感で他社への新規申し込みも減少した」と伝えています。
一企業の不始末が業界にもたらした影響の大きさに、今さらながら驚かされます。しかしこれも、いわゆる「バブル」が弾けただけだと考えれば、NOVAの破綻は単なるきっかけに過ぎなかったのかも知れません。
英会話が上手にできるようになりたい。日本人なら、ほとんど誰でもそう思っているでしょう。しかし本当に必要なのでしょうか。必要がないから、日本人は英会話が上手にならないのだ、という見方もあります。
必要がないものを売るというビジネス。その売上の拡大は、やはりバブルと呼ばれても仕方ありません。必要がないというのは、すなわち実需がないということです。
さらに記事を読むと、「TOEICの点数を上げるためのビジネスマン向け教室」は人気があるとのことです。「残業が減った時間で転職に向けてスキルアップ」しようということらしいです。こちらは実需と言えるでしょう。
一方、「シニア向けなど」のコースも増加しているそうです。ベルリッツ・ジャパンについては、「同社のシニアコースは4年前の開講時に比べ受講生数が20倍近くになった」とのことです。
これについては、JTBと組んで海外旅行と組み合わせたレッスンを提供しているなど、海外旅行ですぐに使うといった実需が支えているように思います。
外国語会話教室の受講生が激減したと言っても、決して一律ではありません。他の業界でも同様で、全体としての市場規模が減少しても、セグメントすれば、堅調な分野や伸びている分野はあるものです。そこを狙い撃ちしていけば、業績を確保できる可能性があります。
どこを狙うかを決めることが、まさに戦略策定のテーマです。その際の重要な着眼点の一つは、その市場が実需に支えられているのか、それともバブルなのかどうかです。
最近、農業が注目されているのは、人間は誰でも食事をしないでは生きられないからです。つまり食品には、確かな実需があるわけです。その点、英会話教室とは大きく異なります。
あえてバブルを狙うという戦略もあり得ます。日本人の英会話コンプレックスを巧みに突くことで、バブル需要をふくらませ、キャッシュにできるからです。しかし、長くは続かず、何かのきっかけで弾けてしまいます。
いずれにしろ、現在の業績は、実需に支えられているのか、それともバブルに乗っているだけなのか、これはしっかりと見極める必要があるでしょう。バブル崩壊の経験から、当然、学んでいなければならない教訓だったはずです。
【今日の教訓】
あなたの企業の業績は、確かな実需に支えられているものだろうか、それともバブルに乗っているだけだろうか。自社の現状分析をするのなら、まずは着目しなければならないポイントだ。その上で、将来へ向けてどのような戦略を構築するかを考えよう。
<参考:日本経済新聞 2009.05.12【29面】>
2009年04月27日
依頼下手、任せ下手を克服するために必要なこと
時間術の本などを読むと、いかに他人に仕事を依頼するか、あるいは頼まれ事を断るか、といったことが時間節約のカギだと書かれていたりします。
他人に依頼をしつつ、他人からの依頼を断るというのは、何とも図々しい話のようにも思えますが、うまくバランスをとることが大切なのでしょう。
戦略の要諦である「選択と集中」の観点からみれば、自分のなすべきことを取捨選択することは、理に適っています。それを実現するのに、依頼すること、依頼を断ることは、どうしてもついて回るものです。
他人に物事を依頼できないのは、断られるのを恐れたり、図々しいと思われたくなかったり、といった理由が考えられます。人間としての、ちょっとした心の弱さの表われと言えるでしょうか。
これは自分にしかできない、という自負心もあるでしょう。ですがそれは、単なる思い込みに過ぎないかも知れません。実際、どうしても自分でできない状況に追い込まれ、他人に依頼してみると、意外とうまくいったりすることは多いものです。
4月27日付けの日本経済新聞に、「タカラトミーは新入社員研修の手法を一新した」という記事が掲載されています。「講義の準備作業など従来は人事部が手掛けていた仕事を新入社員に一任する」とのことです。
狙いは「人事部頼みになりがちだった傾向を改め、自発的に研修に取り組むようにする」ことだそうです。すべて人事部がお膳立てする必要があるというのは「思い込み」に過ぎなかったわけです。具体的には、「研修の部屋のレイアウト決め、書類や用具の準備」のほか、研修内容を担当講師に確認したり、「研修後の宴席の企画や余興の準備」を新入社員に任せます。
上司・部下の関係であれば、「依頼する」は「任せる」に表現を変えることができますね。そうなれば、「図々しい」という感覚もなくなるでしょう。上司・部下の関係でなくても、適任者に「任せる」と考えれば、「依頼する」ことの抵抗感は、薄まるように思います。
タカラトミーが実際に新入社員に任せる業務は、新入社員でも十分にこなせるものです。記事は「社会人の付随業務を研修期間中に体験させる」と解説しています。座学だけでなく、有意義な体験をさせることも、研修の一環だと言えるでしょう。
研修での講義は講師にしかできないかも知れませんが、研修の準備は新入社員でもできるのです。同様に、「自分にしかできない」と思える業務も、細分化すれば、依頼したり任せたりできる部分も、かなりあるはずです。
「選択と集中」の考え方は、物事をまずは細分化して、はじめて成り立ちます。細分化するから、どれかを選び、集中することができます。「ドンブリ勘定」で「自分にしかできない」と決めつけてはいけませんね。細分化しないから、すべてを一人で抱えることになってしまうのです。
逆に、他人に任せて失敗するとしたら、それもまた、業務を細分化して考えていないからです。任せてよいこと、よくないことの区分が不明確で、「丸投げ」状態になってしまっているわけです。
もちろん、結果として、すべてを任せるケースも起こり得ます。しかしそれは、細分化されたパーツのすべてについて、任せても大丈夫だという判断があればこそでしょう。
任せるのが上手な人は、その勘どころをしっかりと押さえています。どのタイミングで報告すべきか、どの部分は判断を仰ぎ、どの部分は自分の裁量で進めてよいのか、明確に指示をすることができているわけです。
【今日の教訓】
あなたが自分の仕事だと思っていることのうち、どの部分なら、他人に任せることができるだろうか。「自分にしかできない」は思い込みに過ぎない。仕事を細分化した上で、本当に自分にしかできないのかどうか、考えてみよ。「選択と集中」の観点で仕事に取り組むのなら、欠かせない視点のはずだ。
<参考:日本経済新聞 2009.04.27【11面】>
他人に依頼をしつつ、他人からの依頼を断るというのは、何とも図々しい話のようにも思えますが、うまくバランスをとることが大切なのでしょう。
戦略の要諦である「選択と集中」の観点からみれば、自分のなすべきことを取捨選択することは、理に適っています。それを実現するのに、依頼すること、依頼を断ることは、どうしてもついて回るものです。
他人に物事を依頼できないのは、断られるのを恐れたり、図々しいと思われたくなかったり、といった理由が考えられます。人間としての、ちょっとした心の弱さの表われと言えるでしょうか。
これは自分にしかできない、という自負心もあるでしょう。ですがそれは、単なる思い込みに過ぎないかも知れません。実際、どうしても自分でできない状況に追い込まれ、他人に依頼してみると、意外とうまくいったりすることは多いものです。
4月27日付けの日本経済新聞に、「タカラトミーは新入社員研修の手法を一新した」という記事が掲載されています。「講義の準備作業など従来は人事部が手掛けていた仕事を新入社員に一任する」とのことです。
狙いは「人事部頼みになりがちだった傾向を改め、自発的に研修に取り組むようにする」ことだそうです。すべて人事部がお膳立てする必要があるというのは「思い込み」に過ぎなかったわけです。具体的には、「研修の部屋のレイアウト決め、書類や用具の準備」のほか、研修内容を担当講師に確認したり、「研修後の宴席の企画や余興の準備」を新入社員に任せます。
上司・部下の関係であれば、「依頼する」は「任せる」に表現を変えることができますね。そうなれば、「図々しい」という感覚もなくなるでしょう。上司・部下の関係でなくても、適任者に「任せる」と考えれば、「依頼する」ことの抵抗感は、薄まるように思います。
タカラトミーが実際に新入社員に任せる業務は、新入社員でも十分にこなせるものです。記事は「社会人の付随業務を研修期間中に体験させる」と解説しています。座学だけでなく、有意義な体験をさせることも、研修の一環だと言えるでしょう。
研修での講義は講師にしかできないかも知れませんが、研修の準備は新入社員でもできるのです。同様に、「自分にしかできない」と思える業務も、細分化すれば、依頼したり任せたりできる部分も、かなりあるはずです。
「選択と集中」の考え方は、物事をまずは細分化して、はじめて成り立ちます。細分化するから、どれかを選び、集中することができます。「ドンブリ勘定」で「自分にしかできない」と決めつけてはいけませんね。細分化しないから、すべてを一人で抱えることになってしまうのです。
逆に、他人に任せて失敗するとしたら、それもまた、業務を細分化して考えていないからです。任せてよいこと、よくないことの区分が不明確で、「丸投げ」状態になってしまっているわけです。
もちろん、結果として、すべてを任せるケースも起こり得ます。しかしそれは、細分化されたパーツのすべてについて、任せても大丈夫だという判断があればこそでしょう。
任せるのが上手な人は、その勘どころをしっかりと押さえています。どのタイミングで報告すべきか、どの部分は判断を仰ぎ、どの部分は自分の裁量で進めてよいのか、明確に指示をすることができているわけです。
【今日の教訓】
あなたが自分の仕事だと思っていることのうち、どの部分なら、他人に任せることができるだろうか。「自分にしかできない」は思い込みに過ぎない。仕事を細分化した上で、本当に自分にしかできないのかどうか、考えてみよ。「選択と集中」の観点で仕事に取り組むのなら、欠かせない視点のはずだ。
<参考:日本経済新聞 2009.04.27【11面】>
2009年04月22日
シャンプーの詰め替え容器はなぜ進化しなければならなかったのか
物事に習熟していくと、段々と細部にこだわるようになります。いわゆるマニアの世界ですね。素人からすれば、「そこまでやるか」というレベルにまで達したりします。
もしかしたら、それは素人目には、意味のないこだわりに見えるかも知れません。ですが、具体的な細部のこだわりを知らなくても、全体としての「違い」は、素人でも感じたりします。
いわゆる「神は細部に宿る」というやつです。具体的にどこが素晴らしいのかがわからなくても、全体として優れて見えるのは、細部へのこだわりの集積が、全体の雰囲気を形づくるからなのでしょう。
また、普通は意識しないような部分に、細やかな配慮がなされていると、ふとした時にそれに気づくと、感動します。そのような商品・サービスに出会ったことは、誰にでもあると思います。
4月22日付けの日経MJ(流通新聞)に、シャンプーなど日用品の詰め替え容器についての記事が掲載されています。「実は誰でも簡単に詰め替えられるように注ぎ口を工夫したり、化粧品のように外観まで徹底的にこだわるなど進化している」のだそうです。
詰め替え容器は、特に「環境意識の高い消費者を中心に注目を集める」商品だと記事は紹介しています。価格面でのメリットもあります。ですが、詰め替え用だから中身が重要だとは言え、容器はどうでもよい、ということにはならないようです。
記事は「ともすれば、本体に比べて詰め替え容器は安っぽいイメージがつきまとう」としています。「細部にこだわる」という観点を持てば、そのようなイメージを放置しておくわけにはいかないでしょう。
具体的には、花王のシャンプーの場合、詰め替え容器として一般的なパックタイプではなく、ボトル形のものを採用しています。厚さや固さを抑えるために「極薄の素材を使っているため、樹脂量はパックタイプと同じという優れものだ」そうです。
ボトル形にしたのは、「注ぐときにこぼす可能性が少ない」といった、使い勝手を改善するためです。パックタイプでも、液体クレンザーの「カネヨン」などで、「注ぎ口にストロー状の筒を内蔵し、安定して中身が外に出てくるように工夫」がなされています。
安価でお得な詰め替え用だから、不便は我慢しろ、というのが、かつての一般的な考えでしたが、それに甘んじていては進化はない、ということなのでしょう。
使い勝手の改善だけでなく、「高級イメージ」を打ち出すケースもあります。「資生堂のヘアケア用品『ツバキ』」の場合、そもそも「日用品ではなく、化粧品」と位置付けており、詰め替え用であっても、イメージを損なわない配慮がなされています。
「安かろう、悪かろう」のような、トレードオフ的な考え方はいつまでも通用せず、いずれは安くて質の良い(使い勝手のよい、デザインのよい)商品が追随してくるものなのです。
記事は、「詰め替え用は繰り返し使ってくれるため、固定客の獲得につながる」と指摘しています。これが新たな気づきとなったというのは、詰め替え容器という商品形態の歴史が、まだ浅いからでしょう。
歴史の浅い商品だから、進化の余地も大きいというわけです。他商品の事例を参考にできるのですから、最初から進化済みの形態でリリースしても良さそうに思うのですが、現実には、進化の過程を最初からいちいち辿ってしまうというのは、興味深い現象です。なぜなのでしょうか?
詰め替え容器の場合、背景には環境意識の高まりがあり、それが市場拡大、ひいては競争環境の激化、さらには差別化の必要性を生んでいます。つまり商品は、市場の成長とシンクロして進化していくものなのです。
そう考えると、成長市場にあっては、商品の進化を追い求めなければならないことがわかります。PPM分析において、成長率の高い「花形」には、投資が必要だとされるのですが、まさにその理論どおりというわけですね。
【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品の対象市場は、どれほどの成長をしているだろうか。もし成長率が高いとすれば、商品もどんどん進化させていく必要がある。特に「細部へのこだわり」という観点で商品を眺めれば、進化させる余地は極めて大きいはずだ。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.04.22【14面】>
もしかしたら、それは素人目には、意味のないこだわりに見えるかも知れません。ですが、具体的な細部のこだわりを知らなくても、全体としての「違い」は、素人でも感じたりします。
いわゆる「神は細部に宿る」というやつです。具体的にどこが素晴らしいのかがわからなくても、全体として優れて見えるのは、細部へのこだわりの集積が、全体の雰囲気を形づくるからなのでしょう。
また、普通は意識しないような部分に、細やかな配慮がなされていると、ふとした時にそれに気づくと、感動します。そのような商品・サービスに出会ったことは、誰にでもあると思います。
4月22日付けの日経MJ(流通新聞)に、シャンプーなど日用品の詰め替え容器についての記事が掲載されています。「実は誰でも簡単に詰め替えられるように注ぎ口を工夫したり、化粧品のように外観まで徹底的にこだわるなど進化している」のだそうです。
詰め替え容器は、特に「環境意識の高い消費者を中心に注目を集める」商品だと記事は紹介しています。価格面でのメリットもあります。ですが、詰め替え用だから中身が重要だとは言え、容器はどうでもよい、ということにはならないようです。
記事は「ともすれば、本体に比べて詰め替え容器は安っぽいイメージがつきまとう」としています。「細部にこだわる」という観点を持てば、そのようなイメージを放置しておくわけにはいかないでしょう。
具体的には、花王のシャンプーの場合、詰め替え容器として一般的なパックタイプではなく、ボトル形のものを採用しています。厚さや固さを抑えるために「極薄の素材を使っているため、樹脂量はパックタイプと同じという優れものだ」そうです。
ボトル形にしたのは、「注ぐときにこぼす可能性が少ない」といった、使い勝手を改善するためです。パックタイプでも、液体クレンザーの「カネヨン」などで、「注ぎ口にストロー状の筒を内蔵し、安定して中身が外に出てくるように工夫」がなされています。
安価でお得な詰め替え用だから、不便は我慢しろ、というのが、かつての一般的な考えでしたが、それに甘んじていては進化はない、ということなのでしょう。
使い勝手の改善だけでなく、「高級イメージ」を打ち出すケースもあります。「資生堂のヘアケア用品『ツバキ』」の場合、そもそも「日用品ではなく、化粧品」と位置付けており、詰め替え用であっても、イメージを損なわない配慮がなされています。
「安かろう、悪かろう」のような、トレードオフ的な考え方はいつまでも通用せず、いずれは安くて質の良い(使い勝手のよい、デザインのよい)商品が追随してくるものなのです。
記事は、「詰め替え用は繰り返し使ってくれるため、固定客の獲得につながる」と指摘しています。これが新たな気づきとなったというのは、詰め替え容器という商品形態の歴史が、まだ浅いからでしょう。
歴史の浅い商品だから、進化の余地も大きいというわけです。他商品の事例を参考にできるのですから、最初から進化済みの形態でリリースしても良さそうに思うのですが、現実には、進化の過程を最初からいちいち辿ってしまうというのは、興味深い現象です。なぜなのでしょうか?
詰め替え容器の場合、背景には環境意識の高まりがあり、それが市場拡大、ひいては競争環境の激化、さらには差別化の必要性を生んでいます。つまり商品は、市場の成長とシンクロして進化していくものなのです。
そう考えると、成長市場にあっては、商品の進化を追い求めなければならないことがわかります。PPM分析において、成長率の高い「花形」には、投資が必要だとされるのですが、まさにその理論どおりというわけですね。
【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品の対象市場は、どれほどの成長をしているだろうか。もし成長率が高いとすれば、商品もどんどん進化させていく必要がある。特に「細部へのこだわり」という観点で商品を眺めれば、進化させる余地は極めて大きいはずだ。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.04.22【14面】>
2009年04月16日
今どきのエンジニア教育が目指すものとは?
若いころ、友人とバンドを組んでいました。メンバーそれぞれ熱心に個別で練習し、スタジオで合わせるわけですが、各自が完璧に弾けるようになっていれば、完璧な演奏が披露できるかといえば、そうでもありません。
個人の演奏をそのままバンド演奏に持ち込んでも、ダメなんえすね。それぞれが他のメンバーの演奏を意識し、全体のアンサンブルを考えながら演奏しないと、見事にバラバラになってしまいます。
コーチングでは、クライアントの視点を移動させるために、さまざまな質問を繰り出します。たとえば、狭くなりがちな視野からクライアントを解放し、自分を客体視させつつ、全体像を俯瞰する視点へ導くことで、気づきが生まれたりします。
経営コンサルティングでも、コンサルタントは社外の専門家という立場で、企業の全体最適の観点から、アドバイスを行ないます。社内の利害から離れた第三者ならではの視点を提供するわけです。
いずれのケースも、いかに「全体」を眺めることが大切かを物語っているといえます。「部分最適は全体最適にあらず」とは、よく言われることです。特に組織のリーダーなら、常に全体最適の発想で、メンバーを動かしていくことが求められますね。
4月16日付けの日経産業新聞に、三菱重工の新人技術者教育についての記事が掲載されています。同社では、「販売や保守点検まで目配りできる視野の広いエンジニア」の育成を目指しているのだそうです。
同社の技術研修所の田口俊夫所長によれば、「大学で特定の研究に専念してきた新人技術者は『部分最適に陥りがち』」。そこで三菱重工では、新人技術者の研修メニューを変更し、「学んでいなかった知識や苦手とするテーマを重点的に学べるようになった」そうです。
人材教育にあっては、目指すべき人材像を明確にする必要があります。三菱重工では、そのような人材を「企業技術者」と呼び、「作りやすく、売りやすく、使いやすく、保守点検しやすい製品を生みだせる」ことを求めています。
従来の組織の考え方では、全体最適を図るべきことは自明としつつ、それを実現するのは、リーダーによる指示命令に依存する割合が高かったように思います。
全体最適が実現しなければ、メンバーを上手く使いこなせなかったという理由でリーダーが責められ、メンバーには責任がない、という考え方です。ですが今や、各メンバーもまた、全体最適を考えることが求められるようになったわけです。
冒頭に述べたバンドのケースと同様で、メンバー個々が全体を見渡すことができていなければ、組織としての全体最適は実現しません。リーダーの役割は、メンバーに対して、全体を見渡す機会を提供し、自らの役割を自律的に果たすのを促すことです。オーケストラの指揮者は、そのような役割を果たしているのでしょう。
一緒に仕事をする場合でも、全体最適の視点を持っている相手とは、心地よくご一緒できます。誰でもそう感じると思うのですが、自分の利益ばかり主張する方は、ご遠慮願いたいところです。
記事の三菱重工の場合、体系的な教育により「企業技術者」を育成していくわけですが、制度はともかく、自社の従業員が同様の視点を持てているか、常々チェックし、必要なら改善・改革していくことが大切です。
その際、特に重要なのは、リーダーの認識です。メンバーを「部分最適」の集合体、すなわち「部品」とみなしていては、「全体最適」を実現することは、至難の業となるでしょう。
リーダーはメンバーを、単なる「部品」ではなく、自律的に「全体最適」を追求する存在だととらえる必要があります。だからこそ、「部分」としてのふさわしい働きができるのです。
【今日の教訓】
あなたの企業の従業員には、「全体最適」の視点で仕事を行なえるような環境が与えられているだろうか。リーダーだけが孤軍奮闘しても、部下の視点が「部分」のみにとらわれていては、「全体最適」の実現は困難だ。部下は「部品」ではない。自律的に「全体最適」を追求する存在だととらえよう。
<参考:日経産業新聞 2009.04.16【18面】>
個人の演奏をそのままバンド演奏に持ち込んでも、ダメなんえすね。それぞれが他のメンバーの演奏を意識し、全体のアンサンブルを考えながら演奏しないと、見事にバラバラになってしまいます。
コーチングでは、クライアントの視点を移動させるために、さまざまな質問を繰り出します。たとえば、狭くなりがちな視野からクライアントを解放し、自分を客体視させつつ、全体像を俯瞰する視点へ導くことで、気づきが生まれたりします。
経営コンサルティングでも、コンサルタントは社外の専門家という立場で、企業の全体最適の観点から、アドバイスを行ないます。社内の利害から離れた第三者ならではの視点を提供するわけです。
いずれのケースも、いかに「全体」を眺めることが大切かを物語っているといえます。「部分最適は全体最適にあらず」とは、よく言われることです。特に組織のリーダーなら、常に全体最適の発想で、メンバーを動かしていくことが求められますね。
4月16日付けの日経産業新聞に、三菱重工の新人技術者教育についての記事が掲載されています。同社では、「販売や保守点検まで目配りできる視野の広いエンジニア」の育成を目指しているのだそうです。
同社の技術研修所の田口俊夫所長によれば、「大学で特定の研究に専念してきた新人技術者は『部分最適に陥りがち』」。そこで三菱重工では、新人技術者の研修メニューを変更し、「学んでいなかった知識や苦手とするテーマを重点的に学べるようになった」そうです。
人材教育にあっては、目指すべき人材像を明確にする必要があります。三菱重工では、そのような人材を「企業技術者」と呼び、「作りやすく、売りやすく、使いやすく、保守点検しやすい製品を生みだせる」ことを求めています。
従来の組織の考え方では、全体最適を図るべきことは自明としつつ、それを実現するのは、リーダーによる指示命令に依存する割合が高かったように思います。
全体最適が実現しなければ、メンバーを上手く使いこなせなかったという理由でリーダーが責められ、メンバーには責任がない、という考え方です。ですが今や、各メンバーもまた、全体最適を考えることが求められるようになったわけです。
冒頭に述べたバンドのケースと同様で、メンバー個々が全体を見渡すことができていなければ、組織としての全体最適は実現しません。リーダーの役割は、メンバーに対して、全体を見渡す機会を提供し、自らの役割を自律的に果たすのを促すことです。オーケストラの指揮者は、そのような役割を果たしているのでしょう。
一緒に仕事をする場合でも、全体最適の視点を持っている相手とは、心地よくご一緒できます。誰でもそう感じると思うのですが、自分の利益ばかり主張する方は、ご遠慮願いたいところです。
記事の三菱重工の場合、体系的な教育により「企業技術者」を育成していくわけですが、制度はともかく、自社の従業員が同様の視点を持てているか、常々チェックし、必要なら改善・改革していくことが大切です。
その際、特に重要なのは、リーダーの認識です。メンバーを「部分最適」の集合体、すなわち「部品」とみなしていては、「全体最適」を実現することは、至難の業となるでしょう。
リーダーはメンバーを、単なる「部品」ではなく、自律的に「全体最適」を追求する存在だととらえる必要があります。だからこそ、「部分」としてのふさわしい働きができるのです。
【今日の教訓】
あなたの企業の従業員には、「全体最適」の視点で仕事を行なえるような環境が与えられているだろうか。リーダーだけが孤軍奮闘しても、部下の視点が「部分」のみにとらわれていては、「全体最適」の実現は困難だ。部下は「部品」ではない。自律的に「全体最適」を追求する存在だととらえよう。
<参考:日経産業新聞 2009.04.16【18面】>