【残念なお知らせ】諸般の事情により、クォーター大阪暮らしは2009年11月末をもって終了することとなりました。これまでのご愛顧に心より感謝申し上げます。今後はこちらのブログで記事を提供してまいります。よろしくお願いします。
2009年07月28日
“抽象化”によりビジネスアイデアを生み出す。
起業あるいは新規事業ネタをチェックするポイントが、いくつかあります。その一つが、事業の発展性です。チェックにあたっては、既存市場・新規市場、既存商品・新規商品を軸にとった成長マトリクスを描いてみたりします。
当該ネタを既存市場・既存商品の象限に書きます。その上で、それが新規市場や新規商品に発展させることができるかどうかを考えてみます。非常にわかりやすいフレームワークです。
それとは別に、購買行動のリピート性についても、考えてみます。顧客はその商品を、反復・継続して購買されるだろうでしょうか。もしそうであれば、安定的に収益を見込むことができます。
では、リピート購買されない商品の場合はどうしたらよいのでしょうか。すぐにあきらめてしまうのではなく、リピート購買されるようなビネスモデルを描くことを考えてみます。
リピート購買されない商品の典型としては、たとえば「結婚披露宴」があります。原則として、一生に一度しか購買されず、「また次も、お願いします」とはなりませんね。
7月28日付けの日経産業新聞に、「帝国ホテルが2010年11月3日に開業120周年を迎える」という記事が掲載されています。現在、「宿泊の主役だった外国人ビジネス客の落ち込みが続く中、会員組織を中心に日本人の優良顧客の囲い込みを目指す」とのことです。
「囲い込み」は、顧客がリピート購買してくれるような仕組みをつくることを意味します。帝国ホテルの場合、120周年へ向けた改修にあたり、「客室を減らしてまで婚礼専用フロアの拡充に踏み切る」のだそうです。
単価の高い点は魅力的ですが、婚礼宴会そのものはリピート購買されません。ですが記事は「婚礼宴会の安定受注は将来の優良顧客の確保にもつながる」としています。
記事によれば、「2006年から『帝国ホテルで挙式をした』カップルを対象とする会員組織『インペリアルクラブグレース』を新設」し、「結婚記念日や出産など人生の節目ごとにホテルの利用を促」すとのことです。
「インペリアルクラブグレース」という会の名前には、ステータス意識をくすぐる魅力がありますね。既に「2万人超の会員を集めている」とのことで、興味深いことに、「15年前までさかのぼって会員を募集し」たそうです。
これは、購買をリピート化する仕組みとして、ヒントになるでしょう。「挙式」の概念を“抽象化”し、「人生の節目」と読み替えることで、リピート購買の機会を見出せるからです。
このような“抽象化”は、購買のリピート化も含め、ビジネスアイデアを生み出すには不可欠です。たとえば「住宅販売」ではなく「快適な住空間の提供」と“抽象化”した表現に読み替えれば、新たなアイデアが生まれます。
“抽象化”による発想法については、私が講師を務めた『新聞記事で鍛える【超】ビジネス発想力強化セミナー』でも、詳しく述べています。
顧客が欲しいのは「商品」そのものではなく、それによりもたらされる「便益」あるいは「価値」だと、よく言われます。“抽象化”する際の切り口として、「便益」「価値」を考えてみるとよいでしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業が取り組んでいるビジネスは、その概念をどのように“抽象化”することができるだろうか。“抽象化”すれば、発想の枠が大きく広がる。ビジネスモデルを刷新することも可能だ。
<参考:日経産業新聞 2009.07.28【18面】>
当該ネタを既存市場・既存商品の象限に書きます。その上で、それが新規市場や新規商品に発展させることができるかどうかを考えてみます。非常にわかりやすいフレームワークです。
それとは別に、購買行動のリピート性についても、考えてみます。顧客はその商品を、反復・継続して購買されるだろうでしょうか。もしそうであれば、安定的に収益を見込むことができます。
では、リピート購買されない商品の場合はどうしたらよいのでしょうか。すぐにあきらめてしまうのではなく、リピート購買されるようなビネスモデルを描くことを考えてみます。
リピート購買されない商品の典型としては、たとえば「結婚披露宴」があります。原則として、一生に一度しか購買されず、「また次も、お願いします」とはなりませんね。
7月28日付けの日経産業新聞に、「帝国ホテルが2010年11月3日に開業120周年を迎える」という記事が掲載されています。現在、「宿泊の主役だった外国人ビジネス客の落ち込みが続く中、会員組織を中心に日本人の優良顧客の囲い込みを目指す」とのことです。
「囲い込み」は、顧客がリピート購買してくれるような仕組みをつくることを意味します。帝国ホテルの場合、120周年へ向けた改修にあたり、「客室を減らしてまで婚礼専用フロアの拡充に踏み切る」のだそうです。
単価の高い点は魅力的ですが、婚礼宴会そのものはリピート購買されません。ですが記事は「婚礼宴会の安定受注は将来の優良顧客の確保にもつながる」としています。
記事によれば、「2006年から『帝国ホテルで挙式をした』カップルを対象とする会員組織『インペリアルクラブグレース』を新設」し、「結婚記念日や出産など人生の節目ごとにホテルの利用を促」すとのことです。
「インペリアルクラブグレース」という会の名前には、ステータス意識をくすぐる魅力がありますね。既に「2万人超の会員を集めている」とのことで、興味深いことに、「15年前までさかのぼって会員を募集し」たそうです。
これは、購買をリピート化する仕組みとして、ヒントになるでしょう。「挙式」の概念を“抽象化”し、「人生の節目」と読み替えることで、リピート購買の機会を見出せるからです。
このような“抽象化”は、購買のリピート化も含め、ビジネスアイデアを生み出すには不可欠です。たとえば「住宅販売」ではなく「快適な住空間の提供」と“抽象化”した表現に読み替えれば、新たなアイデアが生まれます。
“抽象化”による発想法については、私が講師を務めた『新聞記事で鍛える【超】ビジネス発想力強化セミナー』でも、詳しく述べています。
顧客が欲しいのは「商品」そのものではなく、それによりもたらされる「便益」あるいは「価値」だと、よく言われます。“抽象化”する際の切り口として、「便益」「価値」を考えてみるとよいでしょう。
【今日の教訓】
あなたの企業が取り組んでいるビジネスは、その概念をどのように“抽象化”することができるだろうか。“抽象化”すれば、発想の枠が大きく広がる。ビジネスモデルを刷新することも可能だ。
<参考:日経産業新聞 2009.07.28【18面】>
2009年07月28日
伝える側の責任を全うすべし。
コミュニケーションの問題は、さまざまな形で現れます。話が通じないことで、イライラした経験のある人も多いでしょう。あるいは、誤って伝わってしまうこともあります。
基本的には、「伝える側の責任」と受け止めることが鉄則です。特に、「これくらい、言わなくてもわかるだろう」は禁物ですね。仲間内ですらそうなのですから、一般的な商品説明や広告文なら、なおのこと注意を要します。
わからないことがあり、質問をすると、「そこに書いてありますよ」と回答されることがあります。見落とした側が悪いような物の言い方ですが、「伝える側の責任」も大きいはずなのです。
7月27日付けの日経MJ(流通新聞)に、「味の素は顧客から寄せられた問い合わせやクレームの内容を社内で効率的に共有できるシステムを導入した」という記事が掲載されています。
「内容をグラフ化し、誰でも気軽に閲覧・分析できるようにしたのた特徴だ」そうです。興味深いのは、「従来から顧客とのやりとりの内容は社内ネットで公開していた」という点です。
従来のやり方では、「単に内容を羅列するだけのもので見づらく、社員の閲覧率は低かった」とのことです。情報は、伝達(公開)すればよい、というものではないのです。
そこに「伝える側の責任」があるわけです。また、情報を「加工」することの意義があり、それが情報に「付加価値」を与えるということになります。コミュニケーションの問題は、情報を適切に加工し、付加価値を与える作業を怠ることにより起こります。
味の素のこのシステムは「お客様の声ポータル」と呼ばれるもので、記事によれば「野村総合研究所と協力して開発した」のだそうです。商品に関するクレーム等の情報が種類別に整理され、「男女比や年代別など属性を絞って分析することも可能だ」。
「各担当者が自ら顧客の声を分析できるようになった」という点も、興味深いです。情報を加工し、付加価値を与えるべきことを先述しましたが、お仕着せではなく、ユーザー自ら、その作業をできるようにすることが、さらなる付加価値を生むのです。
また、「問い合わせが多かった単語をランキング形式で紹介する」ことまでしています。記事によれば、「少しでも社員にサイトに接続してもらうための多様な工夫を盛り込んだ」とのことです。
「伝える側の責任」を徹底的に追求すると、あらゆる努力を払うものです。社内システムでありながら、外部の顧客に対するような念の入れ方だと言えます。
逆に言えば、対顧客のコミュニケーションの工夫は丁寧に行なうものの、社内向けは、結構、ぞんざいであったりすることが多いように思います。そこには、社内だからという「甘え」があります。
製造業では「次工程はお客様」という言葉があります。自分の工程で果たすべき責任を果たし、次工程へは、お客様に対するように、ベストの品質のものを流す、の意です。
社内におけるコミュニケーションも、そのようでありたいですね。「伝える側」は、すなわち前工程であり、次工程へのコミュニケーションは、完璧なものを期す。甘えを排し、責任を全うするとは、そのようなことなのです。
【今日の教訓】
あなたの企業では、社内コミュニケーションを充実させることについて、どのように取り組んでいるだろうか。対顧客と同様の意識でコミュニケーションが行なわれているだろうか。「伝える側の責任」の意識を高め、その責任を全うすることが大切だ。
<参考:日経MJ(流通)新聞 2009.07.27【9面】>
基本的には、「伝える側の責任」と受け止めることが鉄則です。特に、「これくらい、言わなくてもわかるだろう」は禁物ですね。仲間内ですらそうなのですから、一般的な商品説明や広告文なら、なおのこと注意を要します。
わからないことがあり、質問をすると、「そこに書いてありますよ」と回答されることがあります。見落とした側が悪いような物の言い方ですが、「伝える側の責任」も大きいはずなのです。
7月27日付けの日経MJ(流通新聞)に、「味の素は顧客から寄せられた問い合わせやクレームの内容を社内で効率的に共有できるシステムを導入した」という記事が掲載されています。
「内容をグラフ化し、誰でも気軽に閲覧・分析できるようにしたのた特徴だ」そうです。興味深いのは、「従来から顧客とのやりとりの内容は社内ネットで公開していた」という点です。
従来のやり方では、「単に内容を羅列するだけのもので見づらく、社員の閲覧率は低かった」とのことです。情報は、伝達(公開)すればよい、というものではないのです。
そこに「伝える側の責任」があるわけです。また、情報を「加工」することの意義があり、それが情報に「付加価値」を与えるということになります。コミュニケーションの問題は、情報を適切に加工し、付加価値を与える作業を怠ることにより起こります。
味の素のこのシステムは「お客様の声ポータル」と呼ばれるもので、記事によれば「野村総合研究所と協力して開発した」のだそうです。商品に関するクレーム等の情報が種類別に整理され、「男女比や年代別など属性を絞って分析することも可能だ」。
「各担当者が自ら顧客の声を分析できるようになった」という点も、興味深いです。情報を加工し、付加価値を与えるべきことを先述しましたが、お仕着せではなく、ユーザー自ら、その作業をできるようにすることが、さらなる付加価値を生むのです。
また、「問い合わせが多かった単語をランキング形式で紹介する」ことまでしています。記事によれば、「少しでも社員にサイトに接続してもらうための多様な工夫を盛り込んだ」とのことです。
「伝える側の責任」を徹底的に追求すると、あらゆる努力を払うものです。社内システムでありながら、外部の顧客に対するような念の入れ方だと言えます。
逆に言えば、対顧客のコミュニケーションの工夫は丁寧に行なうものの、社内向けは、結構、ぞんざいであったりすることが多いように思います。そこには、社内だからという「甘え」があります。
製造業では「次工程はお客様」という言葉があります。自分の工程で果たすべき責任を果たし、次工程へは、お客様に対するように、ベストの品質のものを流す、の意です。
社内におけるコミュニケーションも、そのようでありたいですね。「伝える側」は、すなわち前工程であり、次工程へのコミュニケーションは、完璧なものを期す。甘えを排し、責任を全うするとは、そのようなことなのです。
【今日の教訓】
あなたの企業では、社内コミュニケーションを充実させることについて、どのように取り組んでいるだろうか。対顧客と同様の意識でコミュニケーションが行なわれているだろうか。「伝える側の責任」の意識を高め、その責任を全うすることが大切だ。
<参考:日経MJ(流通)新聞 2009.07.27【9面】>