【残念なお知らせ】諸般の事情により、クォーター大阪暮らしは2009年11月末をもって終了することとなりました。これまでのご愛顧に心より感謝申し上げます。今後はこちらのブログで記事を提供してまいります。よろしくお願いします。
2009年04月22日
シャンプーの詰め替え容器はなぜ進化しなければならなかったのか
物事に習熟していくと、段々と細部にこだわるようになります。いわゆるマニアの世界ですね。素人からすれば、「そこまでやるか」というレベルにまで達したりします。
もしかしたら、それは素人目には、意味のないこだわりに見えるかも知れません。ですが、具体的な細部のこだわりを知らなくても、全体としての「違い」は、素人でも感じたりします。
いわゆる「神は細部に宿る」というやつです。具体的にどこが素晴らしいのかがわからなくても、全体として優れて見えるのは、細部へのこだわりの集積が、全体の雰囲気を形づくるからなのでしょう。
また、普通は意識しないような部分に、細やかな配慮がなされていると、ふとした時にそれに気づくと、感動します。そのような商品・サービスに出会ったことは、誰にでもあると思います。
4月22日付けの日経MJ(流通新聞)に、シャンプーなど日用品の詰め替え容器についての記事が掲載されています。「実は誰でも簡単に詰め替えられるように注ぎ口を工夫したり、化粧品のように外観まで徹底的にこだわるなど進化している」のだそうです。
詰め替え容器は、特に「環境意識の高い消費者を中心に注目を集める」商品だと記事は紹介しています。価格面でのメリットもあります。ですが、詰め替え用だから中身が重要だとは言え、容器はどうでもよい、ということにはならないようです。
記事は「ともすれば、本体に比べて詰め替え容器は安っぽいイメージがつきまとう」としています。「細部にこだわる」という観点を持てば、そのようなイメージを放置しておくわけにはいかないでしょう。
具体的には、花王のシャンプーの場合、詰め替え容器として一般的なパックタイプではなく、ボトル形のものを採用しています。厚さや固さを抑えるために「極薄の素材を使っているため、樹脂量はパックタイプと同じという優れものだ」そうです。
ボトル形にしたのは、「注ぐときにこぼす可能性が少ない」といった、使い勝手を改善するためです。パックタイプでも、液体クレンザーの「カネヨン」などで、「注ぎ口にストロー状の筒を内蔵し、安定して中身が外に出てくるように工夫」がなされています。
安価でお得な詰め替え用だから、不便は我慢しろ、というのが、かつての一般的な考えでしたが、それに甘んじていては進化はない、ということなのでしょう。
使い勝手の改善だけでなく、「高級イメージ」を打ち出すケースもあります。「資生堂のヘアケア用品『ツバキ』」の場合、そもそも「日用品ではなく、化粧品」と位置付けており、詰め替え用であっても、イメージを損なわない配慮がなされています。
「安かろう、悪かろう」のような、トレードオフ的な考え方はいつまでも通用せず、いずれは安くて質の良い(使い勝手のよい、デザインのよい)商品が追随してくるものなのです。
記事は、「詰め替え用は繰り返し使ってくれるため、固定客の獲得につながる」と指摘しています。これが新たな気づきとなったというのは、詰め替え容器という商品形態の歴史が、まだ浅いからでしょう。
歴史の浅い商品だから、進化の余地も大きいというわけです。他商品の事例を参考にできるのですから、最初から進化済みの形態でリリースしても良さそうに思うのですが、現実には、進化の過程を最初からいちいち辿ってしまうというのは、興味深い現象です。なぜなのでしょうか?
詰め替え容器の場合、背景には環境意識の高まりがあり、それが市場拡大、ひいては競争環境の激化、さらには差別化の必要性を生んでいます。つまり商品は、市場の成長とシンクロして進化していくものなのです。
そう考えると、成長市場にあっては、商品の進化を追い求めなければならないことがわかります。PPM分析において、成長率の高い「花形」には、投資が必要だとされるのですが、まさにその理論どおりというわけですね。
【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品の対象市場は、どれほどの成長をしているだろうか。もし成長率が高いとすれば、商品もどんどん進化させていく必要がある。特に「細部へのこだわり」という観点で商品を眺めれば、進化させる余地は極めて大きいはずだ。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.04.22【14面】>
もしかしたら、それは素人目には、意味のないこだわりに見えるかも知れません。ですが、具体的な細部のこだわりを知らなくても、全体としての「違い」は、素人でも感じたりします。
いわゆる「神は細部に宿る」というやつです。具体的にどこが素晴らしいのかがわからなくても、全体として優れて見えるのは、細部へのこだわりの集積が、全体の雰囲気を形づくるからなのでしょう。
また、普通は意識しないような部分に、細やかな配慮がなされていると、ふとした時にそれに気づくと、感動します。そのような商品・サービスに出会ったことは、誰にでもあると思います。
4月22日付けの日経MJ(流通新聞)に、シャンプーなど日用品の詰め替え容器についての記事が掲載されています。「実は誰でも簡単に詰め替えられるように注ぎ口を工夫したり、化粧品のように外観まで徹底的にこだわるなど進化している」のだそうです。
詰め替え容器は、特に「環境意識の高い消費者を中心に注目を集める」商品だと記事は紹介しています。価格面でのメリットもあります。ですが、詰め替え用だから中身が重要だとは言え、容器はどうでもよい、ということにはならないようです。
記事は「ともすれば、本体に比べて詰め替え容器は安っぽいイメージがつきまとう」としています。「細部にこだわる」という観点を持てば、そのようなイメージを放置しておくわけにはいかないでしょう。
具体的には、花王のシャンプーの場合、詰め替え容器として一般的なパックタイプではなく、ボトル形のものを採用しています。厚さや固さを抑えるために「極薄の素材を使っているため、樹脂量はパックタイプと同じという優れものだ」そうです。
ボトル形にしたのは、「注ぐときにこぼす可能性が少ない」といった、使い勝手を改善するためです。パックタイプでも、液体クレンザーの「カネヨン」などで、「注ぎ口にストロー状の筒を内蔵し、安定して中身が外に出てくるように工夫」がなされています。
安価でお得な詰め替え用だから、不便は我慢しろ、というのが、かつての一般的な考えでしたが、それに甘んじていては進化はない、ということなのでしょう。
使い勝手の改善だけでなく、「高級イメージ」を打ち出すケースもあります。「資生堂のヘアケア用品『ツバキ』」の場合、そもそも「日用品ではなく、化粧品」と位置付けており、詰め替え用であっても、イメージを損なわない配慮がなされています。
「安かろう、悪かろう」のような、トレードオフ的な考え方はいつまでも通用せず、いずれは安くて質の良い(使い勝手のよい、デザインのよい)商品が追随してくるものなのです。
記事は、「詰め替え用は繰り返し使ってくれるため、固定客の獲得につながる」と指摘しています。これが新たな気づきとなったというのは、詰め替え容器という商品形態の歴史が、まだ浅いからでしょう。
歴史の浅い商品だから、進化の余地も大きいというわけです。他商品の事例を参考にできるのですから、最初から進化済みの形態でリリースしても良さそうに思うのですが、現実には、進化の過程を最初からいちいち辿ってしまうというのは、興味深い現象です。なぜなのでしょうか?
詰め替え容器の場合、背景には環境意識の高まりがあり、それが市場拡大、ひいては競争環境の激化、さらには差別化の必要性を生んでいます。つまり商品は、市場の成長とシンクロして進化していくものなのです。
そう考えると、成長市場にあっては、商品の進化を追い求めなければならないことがわかります。PPM分析において、成長率の高い「花形」には、投資が必要だとされるのですが、まさにその理論どおりというわけですね。
【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品の対象市場は、どれほどの成長をしているだろうか。もし成長率が高いとすれば、商品もどんどん進化させていく必要がある。特に「細部へのこだわり」という観点で商品を眺めれば、進化させる余地は極めて大きいはずだ。
<参考:日経MJ(流通新聞) 2009.04.22【14面】>