【残念なお知らせ】諸般の事情により、クォーター大阪暮らしは2009年11月末をもって終了することとなりました。これまでのご愛顧に心より感謝申し上げます。今後はこちらのブログで記事を提供してまいります。よろしくお願いします。
2009年04月16日
今どきのエンジニア教育が目指すものとは?
若いころ、友人とバンドを組んでいました。メンバーそれぞれ熱心に個別で練習し、スタジオで合わせるわけですが、各自が完璧に弾けるようになっていれば、完璧な演奏が披露できるかといえば、そうでもありません。
個人の演奏をそのままバンド演奏に持ち込んでも、ダメなんえすね。それぞれが他のメンバーの演奏を意識し、全体のアンサンブルを考えながら演奏しないと、見事にバラバラになってしまいます。
コーチングでは、クライアントの視点を移動させるために、さまざまな質問を繰り出します。たとえば、狭くなりがちな視野からクライアントを解放し、自分を客体視させつつ、全体像を俯瞰する視点へ導くことで、気づきが生まれたりします。
経営コンサルティングでも、コンサルタントは社外の専門家という立場で、企業の全体最適の観点から、アドバイスを行ないます。社内の利害から離れた第三者ならではの視点を提供するわけです。
いずれのケースも、いかに「全体」を眺めることが大切かを物語っているといえます。「部分最適は全体最適にあらず」とは、よく言われることです。特に組織のリーダーなら、常に全体最適の発想で、メンバーを動かしていくことが求められますね。
4月16日付けの日経産業新聞に、三菱重工の新人技術者教育についての記事が掲載されています。同社では、「販売や保守点検まで目配りできる視野の広いエンジニア」の育成を目指しているのだそうです。
同社の技術研修所の田口俊夫所長によれば、「大学で特定の研究に専念してきた新人技術者は『部分最適に陥りがち』」。そこで三菱重工では、新人技術者の研修メニューを変更し、「学んでいなかった知識や苦手とするテーマを重点的に学べるようになった」そうです。
人材教育にあっては、目指すべき人材像を明確にする必要があります。三菱重工では、そのような人材を「企業技術者」と呼び、「作りやすく、売りやすく、使いやすく、保守点検しやすい製品を生みだせる」ことを求めています。
従来の組織の考え方では、全体最適を図るべきことは自明としつつ、それを実現するのは、リーダーによる指示命令に依存する割合が高かったように思います。
全体最適が実現しなければ、メンバーを上手く使いこなせなかったという理由でリーダーが責められ、メンバーには責任がない、という考え方です。ですが今や、各メンバーもまた、全体最適を考えることが求められるようになったわけです。
冒頭に述べたバンドのケースと同様で、メンバー個々が全体を見渡すことができていなければ、組織としての全体最適は実現しません。リーダーの役割は、メンバーに対して、全体を見渡す機会を提供し、自らの役割を自律的に果たすのを促すことです。オーケストラの指揮者は、そのような役割を果たしているのでしょう。
一緒に仕事をする場合でも、全体最適の視点を持っている相手とは、心地よくご一緒できます。誰でもそう感じると思うのですが、自分の利益ばかり主張する方は、ご遠慮願いたいところです。
記事の三菱重工の場合、体系的な教育により「企業技術者」を育成していくわけですが、制度はともかく、自社の従業員が同様の視点を持てているか、常々チェックし、必要なら改善・改革していくことが大切です。
その際、特に重要なのは、リーダーの認識です。メンバーを「部分最適」の集合体、すなわち「部品」とみなしていては、「全体最適」を実現することは、至難の業となるでしょう。
リーダーはメンバーを、単なる「部品」ではなく、自律的に「全体最適」を追求する存在だととらえる必要があります。だからこそ、「部分」としてのふさわしい働きができるのです。
【今日の教訓】
あなたの企業の従業員には、「全体最適」の視点で仕事を行なえるような環境が与えられているだろうか。リーダーだけが孤軍奮闘しても、部下の視点が「部分」のみにとらわれていては、「全体最適」の実現は困難だ。部下は「部品」ではない。自律的に「全体最適」を追求する存在だととらえよう。
<参考:日経産業新聞 2009.04.16【18面】>
個人の演奏をそのままバンド演奏に持ち込んでも、ダメなんえすね。それぞれが他のメンバーの演奏を意識し、全体のアンサンブルを考えながら演奏しないと、見事にバラバラになってしまいます。
コーチングでは、クライアントの視点を移動させるために、さまざまな質問を繰り出します。たとえば、狭くなりがちな視野からクライアントを解放し、自分を客体視させつつ、全体像を俯瞰する視点へ導くことで、気づきが生まれたりします。
経営コンサルティングでも、コンサルタントは社外の専門家という立場で、企業の全体最適の観点から、アドバイスを行ないます。社内の利害から離れた第三者ならではの視点を提供するわけです。
いずれのケースも、いかに「全体」を眺めることが大切かを物語っているといえます。「部分最適は全体最適にあらず」とは、よく言われることです。特に組織のリーダーなら、常に全体最適の発想で、メンバーを動かしていくことが求められますね。
4月16日付けの日経産業新聞に、三菱重工の新人技術者教育についての記事が掲載されています。同社では、「販売や保守点検まで目配りできる視野の広いエンジニア」の育成を目指しているのだそうです。
同社の技術研修所の田口俊夫所長によれば、「大学で特定の研究に専念してきた新人技術者は『部分最適に陥りがち』」。そこで三菱重工では、新人技術者の研修メニューを変更し、「学んでいなかった知識や苦手とするテーマを重点的に学べるようになった」そうです。
人材教育にあっては、目指すべき人材像を明確にする必要があります。三菱重工では、そのような人材を「企業技術者」と呼び、「作りやすく、売りやすく、使いやすく、保守点検しやすい製品を生みだせる」ことを求めています。
従来の組織の考え方では、全体最適を図るべきことは自明としつつ、それを実現するのは、リーダーによる指示命令に依存する割合が高かったように思います。
全体最適が実現しなければ、メンバーを上手く使いこなせなかったという理由でリーダーが責められ、メンバーには責任がない、という考え方です。ですが今や、各メンバーもまた、全体最適を考えることが求められるようになったわけです。
冒頭に述べたバンドのケースと同様で、メンバー個々が全体を見渡すことができていなければ、組織としての全体最適は実現しません。リーダーの役割は、メンバーに対して、全体を見渡す機会を提供し、自らの役割を自律的に果たすのを促すことです。オーケストラの指揮者は、そのような役割を果たしているのでしょう。
一緒に仕事をする場合でも、全体最適の視点を持っている相手とは、心地よくご一緒できます。誰でもそう感じると思うのですが、自分の利益ばかり主張する方は、ご遠慮願いたいところです。
記事の三菱重工の場合、体系的な教育により「企業技術者」を育成していくわけですが、制度はともかく、自社の従業員が同様の視点を持てているか、常々チェックし、必要なら改善・改革していくことが大切です。
その際、特に重要なのは、リーダーの認識です。メンバーを「部分最適」の集合体、すなわち「部品」とみなしていては、「全体最適」を実現することは、至難の業となるでしょう。
リーダーはメンバーを、単なる「部品」ではなく、自律的に「全体最適」を追求する存在だととらえる必要があります。だからこそ、「部分」としてのふさわしい働きができるのです。
【今日の教訓】
あなたの企業の従業員には、「全体最適」の視点で仕事を行なえるような環境が与えられているだろうか。リーダーだけが孤軍奮闘しても、部下の視点が「部分」のみにとらわれていては、「全体最適」の実現は困難だ。部下は「部品」ではない。自律的に「全体最適」を追求する存在だととらえよう。
<参考:日経産業新聞 2009.04.16【18面】>