子供のかわりに親を見守るサービス

HANK@森

2009年08月27日 12:38

社会構造が変化するにつれて、世の中に新たなニーズが生まれてきます。それに伴い、新たなビジネスや商品も誕生すします。特に、高齢化社会を迎えての動きが活発です。

8月25日付けの日本経済新聞には、老齢の親を持つ「子供のかわりに親を見守るサービス」が広がっているという記事が掲載されています。「最近は子供の世代の高齢化が進んでおり、見守りサービスの出番が増えそうだ」とのことです。

具体的には、たとえ家事代行のサービスが紹介されています。単純に掃除や家事をするだけでなく、「サービス当日の親の様子をメールで報告する『親孝行プラン』を首都圏で導入」したそうです。

親の自宅にセキュリティシステムを設置するサービスも紹介されています。「センサーの反応が一定時間なかったり緊急ボタンが押されたりすると異常と判断し、家族に知らせるとともに警備員が駆けつける」というものです。

家事代行もセキュリティも、既存のサービスですが、老齢の親を持つ子供の心情をとらえ、ちょっとした付加価値サービスを提供することで、市場を顕在化していると言えるでしょう。

他には、バリアフリーにする住宅リフォームや、バリアフリー仕様の高齢者専用賃貸住宅を紹介しています。これらも、子供の心情をとらえた価値提供です。

高齢化社会と言えば、高齢者本人のニーズのみを考えがちだが、彼らを見守る子供の視点に着眼している点が、興味深いと言えます。「親孝行プラン」といったネーミングに見られるように、「心情」をくすぐる点は、心にくいですね。

「心情」は、商品・サービスの購買に大きな影響を与えます。自分のことなら買うのを我慢できても、愛する者のためならば、いても立ってもいられなくなったりします。

そのような場面で、プレゼントや贈答品の市場が生まれます。上述したサービスも、子供が費用を負担するものと思われるので、その点では、ちょっとしたプレゼントなのです。

プレゼントの特徴は、普通の感覚ではぜいたく品であることが挙げられます。考えてみれば、家事代行も住宅のセキュリティも、高額所得者向けのサービスであり、一般的にはぜいたく品の部類に入るでしょう。

自分のために買うのはぜいたくでも、老親のためなら、支出する費用です。したがって、ぜいたく品をマーケティングしたいのなら、プレゼント用を狙うという手がありいます。

たとえば、1万円もするメロンを買うとしたら、まさか日常的に自分で食べたりはしないでしょう。誰かにプレゼントするためです。あるいは、「自分へのご褒美(プレゼント)」ということになるでしょうか。

「心情」は、時として、必ずしも合理的とは言えない購買行動を引き起こすことすらあります。たとえば、キャバ嬢に入れ上げて高級時計をプレゼントするといった購買行動などは、そうですね。

今回の記事のケースも、「心情」に基づく購買行動を引き起こしていますが、「親孝行」は人間として合理的な行動ですから、このようなサービスの利用を思いとどまらせる要因は少ないでしょう。

【今日の教訓】
あなたの企業が提供する商品・サービスが「ぜいたく品」だとしたら、エンドユーザだけでなく、彼らに対して特別な思いを寄せている人たちに目を向けよう。素敵なプレゼントで、エンドユーザが喜ぶ姿を想像させれば、財布のヒモは緩みやすい。

<参考:日本経済新聞 2009.08.25【31面】>

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