“抽象化”によりビジネスアイデアを生み出す。

HANK@森

2009年07月28日 18:41

起業あるいは新規事業ネタをチェックするポイントが、いくつかあります。その一つが、事業の発展性です。チェックにあたっては、既存市場・新規市場、既存商品・新規商品を軸にとった成長マトリクスを描いてみたりします。

当該ネタを既存市場・既存商品の象限に書きます。その上で、それが新規市場や新規商品に発展させることができるかどうかを考えてみます。非常にわかりやすいフレームワークです。

それとは別に、購買行動のリピート性についても、考えてみます。顧客はその商品を、反復・継続して購買されるだろうでしょうか。もしそうであれば、安定的に収益を見込むことができます。

では、リピート購買されない商品の場合はどうしたらよいのでしょうか。すぐにあきらめてしまうのではなく、リピート購買されるようなビネスモデルを描くことを考えてみます。

リピート購買されない商品の典型としては、たとえば「結婚披露宴」があります。原則として、一生に一度しか購買されず、「また次も、お願いします」とはなりませんね。

7月28日付けの日経産業新聞に、「帝国ホテルが2010年11月3日に開業120周年を迎える」という記事が掲載されています。現在、「宿泊の主役だった外国人ビジネス客の落ち込みが続く中、会員組織を中心に日本人の優良顧客の囲い込みを目指す」とのことです。

「囲い込み」は、顧客がリピート購買してくれるような仕組みをつくることを意味します。帝国ホテルの場合、120周年へ向けた改修にあたり、「客室を減らしてまで婚礼専用フロアの拡充に踏み切る」のだそうです。

単価の高い点は魅力的ですが、婚礼宴会そのものはリピート購買されません。ですが記事は「婚礼宴会の安定受注は将来の優良顧客の確保にもつながる」としています。

記事によれば、「2006年から『帝国ホテルで挙式をした』カップルを対象とする会員組織『インペリアルクラブグレース』を新設」し、「結婚記念日や出産など人生の節目ごとにホテルの利用を促」すとのことです。

「インペリアルクラブグレース」という会の名前には、ステータス意識をくすぐる魅力がありますね。既に「2万人超の会員を集めている」とのことで、興味深いことに、「15年前までさかのぼって会員を募集し」たそうです。

これは、購買をリピート化する仕組みとして、ヒントになるでしょう。「挙式」の概念を“抽象化”し、「人生の節目」と読み替えることで、リピート購買の機会を見出せるからです。

このような“抽象化”は、購買のリピート化も含め、ビジネスアイデアを生み出すには不可欠です。たとえば「住宅販売」ではなく「快適な住空間の提供」と“抽象化”した表現に読み替えれば、新たなアイデアが生まれます。

“抽象化”による発想法については、私が講師を務めた『新聞記事で鍛える【超】ビジネス発想力強化セミナー』でも、詳しく述べています。

顧客が欲しいのは「商品」そのものではなく、それによりもたらされる「便益」あるいは「価値」だと、よく言われます。“抽象化”する際の切り口として、「便益」「価値」を考えてみるとよいでしょう。

【今日の教訓】
あなたの企業が取り組んでいるビジネスは、その概念をどのように“抽象化”することができるだろうか。“抽象化”すれば、発想の枠が大きく広がる。ビジネスモデルを刷新することも可能だ。

<参考:日経産業新聞 2009.07.28【18面】>

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