コミュニケーションの問題は、さまざまな形で現れます。話が通じないことで、イライラした経験のある人も多いでしょう。あるいは、誤って伝わってしまうこともあります。
基本的には、「伝える側の責任」と受け止めることが鉄則です。特に、「これくらい、言わなくてもわかるだろう」は禁物ですね。仲間内ですらそうなのですから、一般的な商品説明や広告文なら、なおのこと注意を要します。
わからないことがあり、質問をすると、「そこに書いてありますよ」と回答されることがあります。見落とした側が悪いような物の言い方ですが、「伝える側の責任」も大きいはずなのです。
7月27日付けの日経MJ(流通新聞)に、「味の素は顧客から寄せられた問い合わせやクレームの内容を社内で効率的に共有できるシステムを導入した」という記事が掲載されています。
「内容をグラフ化し、誰でも気軽に閲覧・分析できるようにしたのた特徴だ」そうです。興味深いのは、「従来から顧客とのやりとりの内容は社内ネットで公開していた」という点です。
従来のやり方では、「単に内容を羅列するだけのもので見づらく、社員の閲覧率は低かった」とのことです。情報は、伝達(公開)すればよい、というものではないのです。
そこに「伝える側の責任」があるわけです。また、情報を「加工」することの意義があり、それが情報に「付加価値」を与えるということになります。コミュニケーションの問題は、情報を適切に加工し、付加価値を与える作業を怠ることにより起こります。
味の素のこのシステムは「お客様の声ポータル」と呼ばれるもので、記事によれば「野村総合研究所と協力して開発した」のだそうです。商品に関するクレーム等の情報が種類別に整理され、「男女比や年代別など属性を絞って分析することも可能だ」。
「各担当者が自ら顧客の声を分析できるようになった」という点も、興味深いです。情報を加工し、付加価値を与えるべきことを先述しましたが、お仕着せではなく、ユーザー自ら、その作業をできるようにすることが、さらなる付加価値を生むのです。
また、「問い合わせが多かった単語をランキング形式で紹介する」ことまでしています。記事によれば、「少しでも社員にサイトに接続してもらうための多様な工夫を盛り込んだ」とのことです。
「伝える側の責任」を徹底的に追求すると、あらゆる努力を払うものです。社内システムでありながら、外部の顧客に対するような念の入れ方だと言えます。
逆に言えば、対顧客のコミュニケーションの工夫は丁寧に行なうものの、社内向けは、結構、ぞんざいであったりすることが多いように思います。そこには、社内だからという「甘え」があります。
製造業では「次工程はお客様」という言葉があります。自分の工程で果たすべき責任を果たし、次工程へは、お客様に対するように、ベストの品質のものを流す、の意です。
社内におけるコミュニケーションも、そのようでありたいですね。「伝える側」は、すなわち前工程であり、次工程へのコミュニケーションは、完璧なものを期す。甘えを排し、責任を全うするとは、そのようなことなのです。
【今日の教訓】
あなたの企業では、社内コミュニケーションを充実させることについて、どのように取り組んでいるだろうか。対顧客と同様の意識でコミュニケーションが行なわれているだろうか。「伝える側の責任」の意識を高め、その責任を全うすることが大切だ。
<参考:日経MJ(流通)新聞 2009.07.27【9面】>