ゲームソフトにスキップ機能

HANK@森

2009年07月06日 16:50

「会社を辞めずに起業する」というコンセプトの「週末起業」は、起業に対する心理的・物理的ハードルを著しく下げました。起業へ向けて行動を起こす人を増やしたという点では、大きな効果があったと思います。

本気で独立起業を考えている人たち向けの起業支援ビジネスの市場が一定規模で存在するとして、「週末起業」の登場は、その下位の市場を創造したとも言えるでしょう。

要するに、起業への“参入”ハードルを下げることで、新たな市場が生まれたわけです。起業に限らず、一般的に、ハードルを下げることが、新市場の創出につながります。

7月6日付けの日本経済新聞に、「任天堂はゲームソフトに初心者向けの『スキップ機能』を採り入れる」という記事が掲載されています。
ゲームの途中で難局にぶつかり前に進めなくなった際に、その場面だけを飛ばして先へ行ける」のだそうです。

難局を何とかクリアしてこそ、ゲームの面白さがあるように思いますが、記事によれば、「何度も途中であきらめているうちにゲームから遠ざかってしまう消費者がいるのに配慮した」とのことです。

厳密には“参入”というより、“継続”ハードルを下げたことになりますが、「ハードルを下げた」という点では、「週末起業」と類似しています。新市場を創出したとまでは言いにくいかも知れませんが、顧客流出を防いだという点で、効果は同様です。

もっとも、ゲーム愛好者になる前に少しだけ遊んでみて、その難しさに耐えられず、放り出してしまう人もいます。そのような人たちについては、スキップ機能による“歩留り”向上実現で、市場創出効果が生まれると言えるでしょう。

要するに、ハードルを下げることは、“参入”にも“継続”にも効果があるわけです。となると、考えるべきは、何がハードルなのかを見極めることでしょう。

ゲームの場合は、途中で遭遇する“難局”がハードルです。週末起業においては、会社を辞めることによる収入リスクです。同じ7月6日付けの日経産業新聞には、語学学習に関するハードルについて触れた記事があります。

7月6日付け日経産業新聞1面に、「語学は1人で学ぶ」というタイトルの記事が掲載されています。「英語などの語学学習にeラーニングを利用する人が増えている」とし、「他人と一緒では気恥ずかしく、1人で学びたいとの潜在需要は高い」と記されています。

自分自身の英会話学習体験を振り返ると、間違えたら恥ずかしいというメンタルブロックを乗り越えたことが、実力アップのブレイクスルーになったと感じています。

ですので、気恥ずかしいなど、何を甘えたことを言っているのか、と思ってしまいます。ですが、それがハードルなのです。ゲームマニアなら、“難局”であきらめてしまうようでは、ゲームの楽しさを理解していないと思うのかも知れません。

私の好きなスキューバダイビングでも、講習を受けてライセンスを取得するまでは至っても、その後が続かない人が多いようです。インストラクターに手とり足とり指導してもらえないことは、初心者にとって大きなハードルです。業界にとって、大きな損失になっていると思います。

顧客視点が重要だと言われますが、「それが当たり前」と思っていると、ハードルだと指摘されて初めて気づくこともあります。リピーターにならなかった人に、なぜ途中でやめてしまったのか、アンケート調査などをすることは、有益でしょう。

【今日の教訓】
あなたの企業から顧客が離れてしまったのは、なぜだろうか。継続するには、どのようなハードルをクリアしなければならなかったのだろうか。ハードルの存在を「当たり前」とせず、解消すべき障害ととらえ、対策を打つことを考えてみよう。

<参考:日本経済新聞 2009.07.06【9面】>

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