どうすれば、商品を買ってもらえるのか。どの企業も、頭を悩ませている課題でしょう。品質を向上させたり、価格を下げたりと、打ち手をいろいろと考えてみたりします。
品質と価格については、商品そのものに焦点を当てた対策ですが、商品が売れるようになる要因は、他にもたくさんあります。たとえば「時流」というものがあります。
特定商品の魅力の度合は、環境の変化に連動します。つまり、魅力度が常に一定だということはないのです。景気やライフスタイルが変われば、今まで脚光を浴びなかった商品が注目されたりします。
また、商品の魅力度が高くても、十分に認知されなければ、なかなか買ってもらえません。セールスプロモーションの技術が問われる場面です。市場を啓蒙する必要もあるでしょう。
6月14日付けの日経MJ(流通新聞)に、「レトルトカレー市場が拡大している」という記事が掲載されています。よく売れているらしいです。このケースでの要因は何でしょうか。
記事によれば、まず、「景気後退に伴い外食を控えて自宅で食事をする消費者が増えたことや、パスタやパンの値上げで相対的に値段の安い米が見直されたことが背景にある」とのことです。
これは「時流」という要因です。「2008年の市場規模は前年比7.7%増の765億円」だそうです。2009年については、さらに「4.6%増の800億円を予想」されています。
元々、日本人はカレーが好きだということがありますし、時流の追い風もあるのですが、メーカーの努力もあります。レトルトカレー以外でも
自宅で食事するとなれば、選択肢は他にもあります。
記事の中で興味を引いたのは、「レトルトカレーの課題は『おいしくないと思い込んでいる人が少なくない』」という、ハウス食品担当者の言葉です。
私自身、レトルトカレーは結構好きで、そのような認識はなかったのですが、世の中一般では、そうなのかも知れません。ですが、「今は格段においしくなっている」と、記事は伝えています。
そのような認識を改めるためには、やはり「試食販売」を行なうべきだという話になります。明治製菓の担当者は、「食べてみておいしさを知り、繰り返し購入する人もいる」とコメントしています。
記事によれば、「何かのきっかけでおいしさを実感し、その後繰り返し購入する消費者が増えつつある」とのことです。マーケティングをするなら、この「きっかけ」の機会を演出することに知恵を絞る必要があるわけです。
試食がきっかけというのは、わかりやすいですが、時流もまた、きっかけとなり得ます。たとえば記事は、「レトルトカレーが保存食として見直されている」と伝えています。
災害や、昨今の新型インフルエンザの流行が、「保存食」への注目を高めるわけですが、それらも「きっかけ」です。企業努力によるものなのか、単に時流によるものなのか、判別しがたい面もありますが、商品が従来よりも売れるようになるには、何らかの「きっかけ」が必要であることは明らかです。
では、何が「きっかけ」となるのでしょうか。インフルエンザ流行でマスクが爆発的に売れるといった、わかりやすいケースもありますが、そうでない場合もあります。レトルトカレーについては、比較的わかりにくい部類に属するかも知れません。
商品が大きく売れる「きっかけ」を解明することは、マーケティング担当者にとって、重要な課題であり、洞察力や発想力が問われる場面です。少なくとも、「きっかけ」を解明しようという意識を、常に持ち続けておくべきであることは、間違いないはずです。
【今日の教訓】
あなたの企業の商品の売れ行きが向上するとしたら、何がその「きっかけ」となり得るだろうか。漫然と売れ行き動向を追いかけるだけではいけない。常にその「きっかけ」を解明する努力を続けよう。
<情報源:日経MJ(流通)新聞 2009.06.14【2面】>