外国語会話教室の受講生数が半減!

HANK@森

2009年05月12日 19:30

「バブル経済」「バブル崩壊」といった言葉は、すっかり定着しています。バブルとは、すなわち「泡」のことです。泡のように、はかない存在がバブルだというわけです。

「バブル景気」となると、いつ萎むかわからない、いつ消滅しても不思議ではない、といったイメージが思い浮かびます。実需に基づかない、虚飾的な売上増加であり、基盤は脆弱です。

5月12日付けの日本経済新聞に、「2008年の外国語会話教室の年間延べ受講生数は、2007年に比べて39%少ない451万3621人だった」という記事が掲載されています。

40%近い市場規模減というだけでも驚かされますが、記事によれば、「最多だった2006年から2年で半減した」そうです。ごく単純に考えれば、減った半分は、実需に基づかない市場だったとみることができるのかも知れません。

受講生数減少の原因について、記事は「2007年10月に英会話学校最大手NOVAが経営破綻し、同社の生徒の多くが受講をあきらめたほか、受講料先払いの仕組みに対する不信感で他社への新規申し込みも減少した」と伝えています。

一企業の不始末が業界にもたらした影響の大きさに、今さらながら驚かされます。しかしこれも、いわゆる「バブル」が弾けただけだと考えれば、NOVAの破綻は単なるきっかけに過ぎなかったのかも知れません。

英会話が上手にできるようになりたい。日本人なら、ほとんど誰でもそう思っているでしょう。しかし本当に必要なのでしょうか。必要がないから、日本人は英会話が上手にならないのだ、という見方もあります。

必要がないものを売るというビジネス。その売上の拡大は、やはりバブルと呼ばれても仕方ありません。必要がないというのは、すなわち実需がないということです。

さらに記事を読むと、「TOEICの点数を上げるためのビジネスマン向け教室」は人気があるとのことです。「残業が減った時間で転職に向けてスキルアップ」しようということらしいです。こちらは実需と言えるでしょう。

一方、「シニア向けなど」のコースも増加しているそうです。ベルリッツ・ジャパンについては、「同社のシニアコースは4年前の開講時に比べ受講生数が20倍近くになった」とのことです。

これについては、JTBと組んで海外旅行と組み合わせたレッスンを提供しているなど、海外旅行ですぐに使うといった実需が支えているように思います。

外国語会話教室の受講生が激減したと言っても、決して一律ではありません。他の業界でも同様で、全体としての市場規模が減少しても、セグメントすれば、堅調な分野や伸びている分野はあるものです。そこを狙い撃ちしていけば、業績を確保できる可能性があります。

どこを狙うかを決めることが、まさに戦略策定のテーマです。その際の重要な着眼点の一つは、その市場が実需に支えられているのか、それともバブルなのかどうかです。

最近、農業が注目されているのは、人間は誰でも食事をしないでは生きられないからです。つまり食品には、確かな実需があるわけです。その点、英会話教室とは大きく異なります。

あえてバブルを狙うという戦略もあり得ます。日本人の英会話コンプレックスを巧みに突くことで、バブル需要をふくらませ、キャッシュにできるからです。しかし、長くは続かず、何かのきっかけで弾けてしまいます。

いずれにしろ、現在の業績は、実需に支えられているのか、それともバブルに乗っているだけなのか、これはしっかりと見極める必要があるでしょう。バブル崩壊の経験から、当然、学んでいなければならない教訓だったはずです。

【今日の教訓】
あなたの企業の業績は、確かな実需に支えられているものだろうか、それともバブルに乗っているだけだろうか。自社の現状分析をするのなら、まずは着目しなければならないポイントだ。その上で、将来へ向けてどのような戦略を構築するかを考えよう。

<参考:日本経済新聞 2009.05.12【29面】>

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