「付録」が大人気のアラサー女性誌

HANK@森

2009年04月09日 21:48

先日の当ブログでは、タクシー会社の「生活支援サービス業」への取り組みについての記事を取り上げました。この記事に関連し、セルフイメージを変えることの意義について述べました。

嬉しいことに、ブログの内容に「感動した」とのメールをいただきました。明確なセルフイメージを描くことや、それを変革することの重要性を、ご理解いただいていらっしゃるのでしょう。ありがとうございます。

とは言え、実のところ、セルフイメージが「独りよがり」では困るということもあります。企業の場合は特に、顧客や市場からどのようなイメージで見られているか、常に意識しておく必要があるからです。

顧客や市場が自社に抱くイメージについては、それが肯定的なものであればあるほど、変えることにはリスクを伴います。「そんな風に見られたくない!」というプライドは、まさに「独りよがり」なのです。

4月9日付けの日経産業新聞に、「30歳前後のアラサー女性誌分野でトップの発行部数を誇る」という「Sweet(スウィート)」という雑誌についての記事が掲載されています。

記事によれば、「11日に発売する5月号は過去最高の60万5千部を発行し、4月号の46万部から急伸する」というから、スゴいです。この人気の秘密は「付録にある」のだそうです。

5月号の付録は「Cher」のトートとポーチのセット。私にはよくわからない世界なのですが、基本的には「バッグ類が人気」だそうです。「どのブランドと組むかで買い手の反応が変わる」とか。

要するに、雑誌としての「企画の内容よりも付録の存在」の魅力が、発行部数に直結しているわけです。それが読者に支持されているのです。既にそのイメージも確立されているのでしょう。

ですが、発行部数が伸びるのはよいものの、「雑誌を作る者として読者を付録で釣るうしろめたさがあった」そうです。そこで付録を外した号を発行したこともあるのですが、「見事に売れなかった」とは・・。

雑誌として「こうありたい」と描いたセルフイメージは、市場に受け入れられなかったというわけですね。今ではもう「吹っ切れた」そうで、「本の作り手にありがちなプライドは捨てている」とのことです。

価値観の問題でもあるので、市場に抱かれているイメージに迎合することが常に正解だとは言いません。ですが、セルフイメージとのギャップがあれば、それなりの結果しか出ないということは、覚悟しなければなりません。それが厳しい現実です。

市場が自社に抱いているポジティブなイメージは、市場に認められた「強み」だと認識すべきでしょう。「選択と集中」の原則からすれば、「強み」をさらに磨きあげていくことが、戦略的には正解となります。

この記事のケースのように、付録の魅力が発行部数を押し上げていることを知りつつ、「確信犯」的に付録を外したのであれば、すぐに修正がききます。

ですが、恐ろしいのは、市場とのイメージのギャップに気づかないケースです。「強み」を勘違いし、全く間違った方向へと経営資源を集中投下してしまうことになるからです。

顧客の声に耳を傾けることは、そのような「勘違い」をしないためにも重要ですね。「なぜ、他社からではなく、わざわざわが社から買ってくれるのか」。簡単な質問ですが、まずはこれを顧客に投げかけてみることをしてはいかがでしょうか。

【今日の教訓】
あなたが自社に対して抱くセルフイメージは、市場・顧客が描くイメージと一致しているだろうか。間違った方向へ努力することをしないように、顧客の声に耳を傾けてみよう。とんでもない「勘違い」をしているかも知れない。

<参考:日経産業新聞 2009.04.09【6面】>

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