週末起業フォーラムを通じて起業支援活動に取り組み、自分でも起
業して強く感じるのは、「一人では何もできない」ということです
ね。お客さんも含め、協力者の力を借りることが、どうしても必要
となります。
ビジネスに取り組む以上、経営資源を確保しなくてはなりませんが、
起業当初は、ほとんど何もない状態です。となると、他者の持つ経
営資源をどれだけ上手に使わせてもらうかが、極めて重要な課題な
んですね。
社内の資源を使う場合、それを上手に配分する技量が必要です。外
部の資源についても同様で、たとえばパートナーをどのように選び、
何を委託するのか等をよく考えて動かないと、なかなか成功できま
せん。
11月19日付けの日本経済新聞(埼玉版)に、埼玉県羽生市にある
小島染織工業という会社についての記事が掲載されています。同社
が「下請けから製造小売りへの転換を進めている」と報じています。
記事によれば、同社は「130年以上の歴史を持つ老舗の染織加工メ
ーカー」です。元々は、「農業の副業として当時の作業着として使
う農作業用のまた引きや足袋を生産し始めたのが始まり」だそうで
す。
現在は「剣道着やのれん生地の染織加工」がメインのようですが、
記事には「下請け」とあるので、自社ブランドで販売しているので
はないのでしょう。小島秀之社長によれば、「今後の需要拡大は見
込めない」とのことです。
下請けの場合、発注企業も「協力者」の一つであり、ビジネスパー
トナーとしては、ありがたい存在でもあります。しかし時流を考え
れば、見直すことが必要だというわけですね。
記事によれば、「藍染め関連の事業者数はここ10年は横ばいで推
移しているが、約85年前と比べると2%程度にまで激減している」
とのことです。なかなか、厳しいですね。
小島社長は元々、伊藤忠商事に勤務していたのですが、先代の死去
に伴い社長に就任しました。「需要拡大の見込めない商品ばかり作っ
ていて売上は減る一方だった」ことに、危機感を募らせました。
そこで取り組み始めたのが「新商品の開発」であり、今回の記事に
ある「製造小売り」へとつながります。とは言え、「最初に企画し
た藍染めの手ぬぐいとバンダナは全く売れず大失敗だった」そうで
す。
しかしその後、ノウハウを蓄積し、「2008年に売り出したエコバッ
グやTシャツは比較的好調で」、「次なる商品として期待がかかる
のはジーンズだ」といいます。
同じ藍染めでも、商品企画を工夫すれば、展望は見いだせるもので
す。色落ちのジーンズあたりは、「こだわりのある消費者の購買意欲
を刺激する」魅力的な商品だと思います。
そう考えると、
小島染織工業をはじめとする染織業者を下請けとし
て使っていた発注者は、何をやっていたのかでしょうか、という気
がします。
推測ですが、藍染め製品だけを扱っていたわけではないのかも知れ
ません。他に売れるものがあれば、藍染めの新商品を企画しなけれ
ばならない義理もないでしょう。
でも染織業者からすれば、パートナーとしては、実に頼りない存在
だということになりますね。
小島染織工業については、「企画力を磨くため他者との共同開発に
も取り組み始め、製造小売りのノウハウを蓄積」する努力をしてき
たそうです。活路を見出すために、新たなパートナーを開拓したわ
けですね。
新たな戦略の構築は、経営資源の再配分を伴います。そして、持て
る資源上の戦略を展開することはできません。
外部の協力者という資源についても同様で、パートナーとの関係の
見直しに後れをとると、新たな展望を拓けないことになってしまう
のです。
<参考:日本経済新聞 2008.11.19【埼玉23面】>